法人保険活用に関してのQ&A
Q.社長の退職金の準備はどうやったらいいのでしょうか
A1
会社が税務上損金で落とせる社長の退職金の計算式は以下の通りです
退職金損金算入限度額の目安 =
最終報酬月額×勤続年数×功績倍率(社長は概ね3倍)+特別功労金の合計
- 勤続20年 最終報酬月額100万円 6000万円
- 勤続30年 最終報酬月額150万円 1億3500万円
- 勤続40年 最終報酬月額200万円 2億4000万円
さらに、特別功労加算として、この金額に30%を割増しできます。このように、社長の退職金はけっこう高額になるため、支給時の利益や内部留保に頼らない、時間をかけた事前の計画が必要になります。
A2
退職金にかかる所得税はこんなに有利です。
退職金を受取った社長の所得税は「退職所得」となり基礎控除を差引いた上に、その金額を更に半分にした額を分離課税で課税します。
●勤続30年で1億円受取った場合 課税対象額は4250万円です。
●所得税住民税は1800万円で、実に手取額は約8200万円になります。
A3
アフタータックスではなく、ビフォータックスが有利です。
預金から退職金を支払うと、法人税を払った後のお金を退職金に充てます。
1億円の退職金を用意する場合、毎期1000万円の預金を10年に亘ってプールするには、約15000万円の利益を出し、うち5000万円の法人税を負担しながらということになります。
一方、毎期1000万円を含み資産(課税の繰延べ)にしておいて、それを10年後に取崩し、退職金に充当すれば、法人税や事業税の負担のないお金を個人の退職所得に移すことになります。
A4
そのために最もいい方法が損金算入のできる生命保険の活用です。
従来の「死んでナンボ」から「生きて使う」という発想の転換が必要です。
つまり、「死亡保障」が前提の生命保険であっても、生きているうちに活用する」こともできるのです。損金算入可能な生命保険に加入し、死亡時の保障を確保しつつ退職時点にあわせたプランを導入することが望まれます。
万一の時の死亡保障と、勇退時の退職金原資と、双方に対応できる大変効果の高い社長のための財務リスク回避が図れます。
A5
オーナー会社社長で勇退しない場合でも退職金は払えます。
税法の規定に「みなし退職」というものがあります その要件は
①代表権をはずれる
②役員報酬を半分以下にする
③非常勤役員になる
といったことで、実質的に経営に参画していないということにして、役員退職金を受取ることができます。
この場合、注意しなければならない点は、在職中きちんと死亡保障を確保しつつ、勇退時に最も効果が発揮できるような保険プランを導入することです。
多くの保険会社商品の中から、最も効果の高いプランを選択し、組合わせることが、なにはともあれ大切な作業です。
A6
あとわずかで退職するのですが、退職金を払いたくても資金がない場合はどうじたらいいでしょうか。
時間をかければ、なんとか退職金原資の準備が出来るのですが、すぐに退職金が必要というケースでは、銀行から借入れるか、とりあえず未払いにしておくか、あるいは諦めるかという選択になりがちです。ところが生命保険を使って、とりあえず帳簿上退職金を払い、税制上の恩典を受け、そのあと退職金そのものを会社が借りた形にしておくことが考えられます。
会社は実質、退職金という資金を用意できていない場合でも、借入金の清算のために法人契約で終身保険に加入する方法で、死亡時に全て決着がつくような手はずが整えられます。
A7
退職金より相続のことが心配というケースではどうしたらよいでしょうか。
オーナー会社のほとんどのケースで、経営トップが自社株式を相当保有している為に、相続の問題をはらんでいます。
つまり、勇退退職金そのものが場合によっては相続財産として課税されるので、勇退退職金はむしろ取りたくない場合も出てきます。このような場合には、いっそ現金で退職金を出すというのではなく、法人で用意した終身保険を、退職金の一部として社長に支払うという方法が有利です。その手法には大変ノウハウが必要です。
A8
退職金を自社株対策に使う方法
自社株式を次の代に渡すのは、生前譲渡か相続ということになりますが、いずれにしろ評価額を下げるための手法を検討する必要があります 自社株式の評価の方法は事業規模によっても異なりますが、中小企業の場合の評価方法は純資産によってなされることが多く、役員の退職金を支払うことによる純資産の圧縮はメリットがあります そのあたりを睨んだ保険プランはケースバイケースですので、やはり専門家の知恵を利用する必要があります。
A9
一般社団法人を設立する自事業承継対策
A8で役員退職金を支払ったのち、会社の純資産評価が下がった時を見計らって、別途設立した一般社団法人へ社長の保有する自社株式を売却する方法があります。この方法の最大メリットは、社長の保有する自社株式を換金化できるということに留まらず、一般社団法人がいわばホールディングカンパニーになることで、自社株式の株価が将来高騰した時でも、その株式の相続人がいない(一般社団法人は資本金がなく、株主が存在しない)ため、自社株の相続の問題が生じないということです。 この手法は、税務上問題を生じないよう、定款の作り方、社団法人の事業の在り方など、しっかりした制度設計が必要となります。弊社には多くのコンサルティング実績がありますので、一般社団法人についてお知りになりたい方はご相談ください。法人生命保険をからめた、一般社団法人活用事業承継対策をプランニングいたします。
A10
損金経理に頼らない退職金準備
役員の退職金を全損の生命保険を使って準備するのは、きわめてオーソドックスな手法といえます。しかし会社の状況では経費を出すことで、利益の確保ができなくなることを避ける必要があります その際考えられるプランは資産計上の保険を使い、その保険資産そのものを退職金として社長個人に名義書換する方法です その際の保険の評価額は所得税法上、解約返戻金となりますが、ここで解約返戻金が少なくなるタイプの保険を導入することで、大変有利な退職金支給プランが可能になります。
A11
勇退退職金と死亡退職金のどちらで受取った方がいいのかという疑問
老後生活を豊かにするための資金が勇退退職金だとすれば、相続や事業承継に生かすための資金が死亡退職金という考え方で進めるべきです。ということで、その二つのテーマに即した保険のプランが必要になります それこそ保険の商品化戦略ともいえるもので、やはりプロの業が必要です。
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Q.事業承継や相続問題をどのように解決したらいいのでしょうか
A1
事業承継の最も大きなテーマは後継者を誰にするかという人の問題ですが、それにはお金の問題が絡むことも多いのです。
社長の保有する自社株式をスムーズに後継者に移転することが、事業承継問題を捉える際のキーポイントです。生前贈与で後継者に時間をかけながら移転する事例が良く見られますが、贈与税の税率が高く、概して低い税率の範囲で贈与しようとすると、なかなか移転が進みませんし、その間万一のことがあれば、問題が一気に噴出してしまうという恐れを内包しております。それに対して、終身保険を活用して、社長の死亡時に自社株式を相続人から引取り、これを金庫株にしてしまう方法を取れるよう計画しておけば、万一の際の対策がいつでも打てることになります。
A2
勇退をする場合と死亡退職の場合の保険戦略は二段階で考えるといいでしょう。
勇退時には、社長の保有する自社株式比率は相当高いのが実情です。勇退までに亡くなった場合には、いわゆるキーマン保障できちんと死亡保険金が会社に入るようにしておくことは最も大事な点です。さらにこの保険が勇退後も事業承継に役立つようにするには、法人から個人へ保険を引継ぐ、即ち会社契約の保険を退職金の一部として譲渡することが可能のようなプランを予め作っておくことが望まれます。途中勇退をせず死ぬまで会社に役員として就業する場合は、社長の持つ自社株式を相続人から会社が買い取る原資確保の為の終身保険はかなりメリットが出てきます。
A3
内部留保が十分あるので問題はないと思われますが。
内部留保の多い会社ほど、自社株評価が高くなり、社長の相続人の相続税負担が厳しくなります。内部留保がいくら多くても、オーナーサイドの保有する自社株は会社の財産ではなく、個人の財産ですので、相続人の納税負担を減らす方法または納税原資を確保する方法をきちんと事前に策定しておく必要があるのです。そのための手段として、必ず死亡時に保険金を確保できる終身保険の設定が望まれます。
A4
法人と個人のどちらで準備すべきかといいますと。
オーナー会社にあっては法人と個人はある意味表裏一体とも言えます。会社のために個人で債務保証をしているような場合は特にその傾向が強いものと思われます。その意味で、相続対策は法人でできるものであれば法人できちんと対策を打ち、さらに個人でもやった方がいいと判断される場合は、個人でも手を打つといったやり方がいいと思います。法人で手を打って、それを個人にバトンタッチする手法は、税務上もさらに効果的です。
A5
子供が何人もいて、長男に事業を承継させるのが大変というケースでは。
遺産相続でよくもめるのは、法定上均等に相続権があるにもかかわらず、株式や不動産などの分割し難い相続財産を多く保有している場合です 長男に自社株を引継ぎ後継者になってもらおうと思っても、その他の流動的な財産がない場合、残りの兄弟が株式の分割を求めてこないとも限りません。その場合、株式を兄弟で分け合うことになって、長男の経営権の維持は極めて難しいといった問題を引き起こすのです。このような事態を避けるべく、生命保険できちんと対策を打っておくことが必要なのです。
A6
生前贈与で対策を打つのと、相続で手を打つのとどちらが有利かといえば。
全てケースバイケースで対応せざるを得ないと思いますが、決して贈与税が高いという訳ではありません。相続時清算課税制度を利用して、将来値上がりをするようなものや、相続開始までに相当の収益を上げられるものなどを先に贈与することが有利な場合もあります。また、毎年の贈与税の非課税枠(110万円)や10%の税率の範囲(310万円)などで贈与を多くの方にすることで、相続財産そのものを引下げる効果が得られます。と同時に、この贈与された金額で加入できる生命保険を設計することで、相続財産から一時所得へお金の区分を変えることができ、この手法はいろいろな対策に繋がります。
A7
不動産を活用して、マイナスの財産を作れば相続税はかからないといいますが。
よく遊休資産を賃貸マンションにして、建築費を銀行借入れすることで、相続税を払わなくするスキームがあります。しかしながら、その場合借入金を返済し終わった後には負債はなくなることになります。むしろ、入居者が常に一定の割合を確保できないと、収益物件とはならず、返済そのものが厳しくなり、何のために借入れを起こしたのか本末転倒になるケースもあるほどです。それに比較して生命保険の対策は、保険料の目途さえきちんと立っていれば、必ず所定のキャッシュ(保険金)が入ってきますので、それを納税原資にしたり、代償分割の資金にしたりといったテーマに役立ちます。
A8
保険金もみなし相続財産なので、さらに相続税が上乗せされるのではという懸念には。
保険金も課税されるのは事実です。しかしこれは納税資金として機能しますので、不動産や自社株のようなすぐに換金化できない相続財産を多く抱えた方には、増税のマイナスより納税のプラス効果が高いのです。あとはいかに保険の契約形態や商品選択で相続税が押さえられるかといった、商品化戦略の組み方が大事な要素になります。
A9
役員の保障として役員全員が保険に加入しようとしたが、社長の年齢も高く、また身体の具合も悪く、社長が保険に加入できない場合は。
社長が被保険者になって、保険金を会社や相続人に残すのが難しい場合、他の役員などを被保険者として、税制上の恩典を取りつづける手法があります。それらの含み資産を、相続開始時に換金し、利益を確保することで、さまざまなテーマに合致させることが可能です。
A10
今から先のことを考えても世の中が変われば役に立たないのでは、といいたくなりますが。
先々のことは誰にも分かりません だからといってその時はその時とばかりに、いっさい準備をしないのでは、何も問題を解決できません。まずはベースになる手を作っておいて、状況の変化に合わせ修正する方法が望ましいのではないかと考えます。
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Q.税負担の軽減は何故必要なのでしょうか
A1
保険で節税したいという方に。
全額損金計上の保険に加入し、一定期間経過すると大きな返戻金があるプランだと税負担の軽減が可能のように見えます。しかし実際にこういった方法で多くの会社が税負担を軽減できるとしたら、わが国の税収は落込み国として成立たなくなってしまいます。節税という言い方がありますが、実際には利益の繰延べであって、解約返戻金が全額収益に計上されることによって、そこで繰延べられた利益が課税されるということなのです。
A2
ということは保険で利益を繰延べることは意味がないと?
必ずしも意味がないことではありません。保障を確保しながら繰延べた利益を、最終的に費用と相殺させる目的であれば、その保険で費用化することは長期債務の先払い的な効果があり、会計上も優れた手法といえます。例えば、役員の退職金が10年後に相当の額の支払いになると想定される場合、10年間の保険料で役員退職引当金としての役割りを担うことができます。さらに万一の時にはキーマン保障として高額の保険金を会社は入手できるので、まさに一挙両得です。そのほか、予期しない損失のために含み資産は、いつでも会社の意図的な解約によって会社に取り込める装置なのです。ある意味、松下幸之助が説く「ダム経営」そのものと言えましょう。
A3
利益が常に出るかどうか分からないので、保険の導入は難しい
保険は長期に保険料を負担する必要がありますので、当然中長期の経営計画に基づく資金繰りに則って検討すべきことです。とはいえ不測の事態が起きて保険料の負担が厳しくなる場合があります。このようなときにすぐ解約してしまうということになっては、解約返戻金もまだ十分に出ないなど、何のために保険を導入したのか意味がないということになりかねません。その際、仮に赤字に陥っても資金がショートしても、契約者貸付制度などを活用することで、当初の目的どおりに保険戦略を維持することができるのです。おおよそ保険料の3回分の資金負担が可能であれば、保険を長期に有効に生かせます。
A4
今はいいけど税制が変わったら、効果がなくなる?
全ての処理は、国の定める法律や税制に基づきますので、それが変更されたら確かに効果を失う恐れはあります。しかし、だからといって今現在効果のあるものを自ら捨ててしまうのは馬鹿げています。別にリスクがあるのは保険だけではありません。すべてのことは、将来なにが起きるか分からないということを前提にして成立っています。変化が発生しそうな時には、それにあわせて手を打つということでしか、方法はないということです。すでに獲得した税務上の恩典は、返上する必要はないわけですから、大いに先取りすべきです。
A5
具体的にはどのような将来の目的に含み益が充当可能でしょうか
最もポピュラーなプランは、役員や社員の退職金原資を確保するということです 日本の税制では現在退職債務についての引当ては認められておらず、外部拠出型の中退協やいわゆる401kにのみ損金性を認めています。しかしこのいずれも会社の手からお金を離さざるを得ず、万一の際の資金として会社が使うことはできません。それらに比べ生命保険で死亡保障を確保しながら含みにした資金は、いつでも会社が借入れたり換金したりすることのできるお金です。
退職金以外にも、損害保険と同じような効果、修繕準備金、貸倒引当金、特別損の引当 等々、いくらでも引当効果を発揮できます。
A6
費用ではない保険(資産計上の保険)でも効果が得られますか
建設業のように官公庁の入札基準(経審)維持のため、利益をきちんと確保しなければいけない業種もありますので、保険で費用化して含みに変えるということが必ずしもプラスということにはならないこともあります。そのような場合は当然終身保険のように全額資産計上の保険を使わざるを得ませんが、じゃあ全く税務上のメリットがないかというとそのようなことはありません。全額損金の保険に加入して保険金や解約返戻金を受取った時には、その時点で全額収益となり課税されます。しかし全額資産計上の場合、保険料積立金という資産に積まれていきますので、保険金や解約返戻金からその積立金を差し引いた額が収益となり、結局は全期間でみると全損と全額資産は差がないといってもいいでしょう。それでもなおかつ全損のニーズが高いのは、当座の税の繰延べができるという心情的なものと、含み資産をいつでも会社に還流させることで、会社の利益のコントロールが容易になるとの考えに基づいているものと思われます。
A7
保険料は資金が固定化するので、あまり有利ではないのでは。
資金が固定化することが悪いことかどうかという議論をまずすべきです。保険料の発生により資金繰りが悪化するということはあるかもしれません。しかしその場合においても、結果的には法人税の圧縮に繋がっている場合は、メリットが多いということになりましょう 以前のように金利が高かった時には、資金の固定化で利息分を機会損失していると考えられていました。しかし現在のような長期低金利時代にあっては、むしろ掛捨てで保障を取るくらいなら、保険料が高くても高返戻率の商品に加入して、金利で保障を取る方法がより金利計算上は有利ではないかと思います。
A8
具体的な商品を知りたい。
効果の点では、全額損金処理可能で、できるだけ100%に近い高返戻率の商品ということになりますが、そのような保険プランは現在「全損タイプの定期保険」しか該当しません。
しかし、保険料がそれほど高くないので、被保険者を多く集める必要もありますし、30代~40代の比較的若い方でないと戻り率が高くない、といったデメリットがあります。
次の選択肢としては保険料の2分の1を損金で落せる「逓増定期保険」「長期平準定期保険」があります。保険料も結構高いため、プランを作りやすい商品です。年齢お よび何年後に解約するかで、効果がかなり異なります。
保険会社、保険商品、喫煙の有無、健康状態などにより、保険料・パフォーマンスにかなりの違いがありますので、できるだけ多くの保険会社の、商品比較がぜひとも望まれます。
A9
会社が小さいので保険に加入できる人数が少ない
社員に目一杯保険に加入してもらうことになりますが、それにしても頭数は多いほど、柔軟な設計が可能です。また従業員の離職率などが高い場合には、従業員を被保険者にすることは効果が著しく悪くなります。
適切な保険プランは、年齢や会社の業態などによっても変わってきますので、具体的な商品構成は十分打ち合わせる必要があります。
A10
いろんな保険代理店や営業マンがいろいろプランを持ってきて
ベストプランは最初からあるわけではありません。
最初にあるのは、会社としてどのようなリスク回避を図りたいかです。いろいろなケースを想定して、各保険会社の商品をシミュレートしながら、最も目的に合致し、また効果が最も高いプランを、組合わせる必要があります。その際忘れてはならないのが、商法民法税法といった法律を絡め、なお会社の長期経営計画に合致させるなど、経営といった見地からの検証も必要です。単に保険料の高い安い、解約返戻率の高い低いといった商品のコストパフォーマンスの問題だけで判断すべきではありません。数多くのコンサルティングの実績や経験がものをいう局面も多いのです 少なくとも20社くらいの保険商品の比較ができなければ、最適なプランニングは厳しいものと思います。
【ご注意】
税制に関する記載は全て2017年4月1日現在の税制によるものです。将来、税制の変更等により、記載されている内容が変更となる場合がありますので、ご注意ください。