なぜ保険会社のコールセンターは繋がるまで30分も掛かるのか
公開日 2021年9月6日 更新日 2022年3月13日
少し前ですが、「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏が電話について「若い人が嫌がるのは当然だと思う」と発言したことが話題になりました。
ビジネスにおける電話不要論は数年前からネットで繰り返し議論されていますが、金融機関への連絡手段はBtoB、BtoC問わず未だに電話が圧倒的です。
総合窓口のフリーダイヤルに電話すると自動音声で各担当部署に振り分けられる手法が一般的ですが、住所変更やクレジットカードの変更などの単なる契約内容変更から、保険の場合だと保険金請求など緊急性の高い重要手続きまで未だにすべて電話対応という会社も少なくありません。
ホームページ上の該当ページから請求書PDFファイルを開いて、プリントアウトした請求書にサイン&画像化して返信すればいいという会社は、国内の金融機関ではまずありません。フリーダイヤルにコールして請求書の原本を取り寄せて、公的証明書を添付して送る必要があったりするので、手続き完了まで1~2週間かかることもよくあります。
印鑑証明書添付の上での実印や、銀行印など押印の必然性がある場合は仕方ありませんが、どう考えてもオンラインで数分あれば済むと思われるような手続きまで電話というのはいかにも「昭和」を感じてしまいます。
ただでさえ繋がりにくいのに・・・
金融機関のコールセンターは「つながりにくい」電話の筆頭に挙げられると思いますが、コロナ禍により多くの金融機関はコールセンター業務の殆どを在宅・テレワーク化させました。
コールセンター業務というのは多数のオペレーターが限られたスペースで一日中顧客からのコール対応をしますから、飛沫が飛びますし3密になりやすく、感染拡大リスクが高いと考えられるためです。
このこと自体は仕方がないと思いますが、それで何が起きたかと言えば電話対応の劣化です。
オペレーターの数を絞っていること、それに反比例してコールが増えていることからとにかく電話が繋がりにくい。保険金請求のような重要度が高い手続きでも30分以上待たされることもあります。
そしてオペレーターの自宅で受電しているからか、極めて音声品質が悪い場合があったりします。
またスーパーバイザーや同僚が物理的に近くおらず、誰かに聞く・確認することが出来にくいためか、ミスアナウンスを伝えられたりや折り返し電話が頻発したりする傾向を強く感じます。30分も辛抱強く待った挙句にミスアナウンスでもされたら、コールセンター担当者に愚痴のひとつも言いたくなってしまいます。
金融機関によっては、メールでのやり取りが一切できないという対応をしているところもありました。
言った・言わないを防ぐためにもメールなど文章で記録を残すのはビジネスの基本と思いますが、メールの誤送信による顧客データ流出や情報漏洩事故を防止するためか、メールで連絡をお願いしても毎回電話をかけてくるのには閉口します。
メールにはリスクがあるのは理解できます。
とはいえ、電話のみに頼ると重要事項の聞き違いなどミスコミュニケーションが発生しがちです。効率性もオペレーターの知識・スキルに大きく左右されますし、結局別の担当者から確認のための電話が再度かかってきたり後々の問題やクレームにつながったりと、顧客の不満や不安を招いてしまうことも多いでしょう。
特に保険金支払いのようなお金が絡む用件の場合、お客様へのミスアナウンスは大トラブルに発展しかねません。
チャットボットやチャットサポートのような仕組みを導入する会社も少しづつ増えてきましたが、今後はこのようなAIツールが導入されていくことで、オペレーターが人的に対応する必要のある問い合わせ自体が大幅に削減されていくことが望ましい方向性だと思います。
ご参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
そして金融・保険に携わるプロとして、何よりお客様に対する誠実さ・真心・信頼関係より大切なものはないと考えています。
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