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役員報酬で節税する方法と注意点|報酬額の最適化・節税額を最大化するためのシミュレーション

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役員報酬で節税する方法と注意点|報酬額の最適化・節税額を最大化するためのシミュレーション

公開日 2023年4月30日 更新日 2023年6月5日

法人が納めなければいけない税金には、法人税や法人所得税があります。個人と同様、法人も納税は義務ですので、所定の計算式にのっとった納税額を納付しなければなりません。

法人が納付すべき税金については、適正な役員報酬を設けることで納税額の負担軽減を図ることが可能です。本記事では、法人に対する税対策としての役員報酬の適正な取り扱いについて解説します。ぜひ参考にしてください。

法人が納めなければいけない税金の種類

役員報酬を用いた法人の税対策についてご紹介する前に、法人が利益を得た場合に課せられる税金について確認しておきましょう。

法人の場合、売上から諸経費を差し引いた金額に対して、以下のような税金が課せられます。

【法人が支払う税金の種類】

  • 法人税(2%)
  • 地方法人税(法人税×10.3%)
  • 法人住民税(4%:東京都23区内の場合)
  • 法人事業税(75~7.48%)

これらの税金を少しでも節税するためには、以下のような視点を持つと良いでしょう。

【法人の節税の考え方】

●        利益自体を減らす

●        利益にかかる税率を下げる

●        控除や特例など税制の優遇を利用する

役員報酬によって節税ができると言われる理由は、「会社が役員報酬を支払うことで経費に算入できるから」です。利益自体を減らすことができるため課税価格が少なくなり、納税額が抑えられるわけです。

役員報酬と税金の関係とは?

役員報酬とは、会社の取締役や監査役、執行役、会計参与などの役員に対して支払う報酬のことです。

従業員に支払う給与は労働の対価として支払われるのに対し、役員報酬は原則として毎月一律の金額が支払われます。役員報酬の金額は会社設立時に定めるほか、株主総会などにより年に1度決められ、原則として1年間は変更できません

役員報酬としてまとまった資金を支出することで、企業内の資金が減るため、その分かかる税金が抑えられます。ただし、役員報酬で節税をするためには、役員報酬を支払う法人の税金と報酬を受け取る個人の税金について知っておくことが大切です。

主に以下の3点について、役員報酬との関係を理解しておきましょう。

  • 法人税:役員報酬を支払う企業側の税金
  • 所得税:役員報酬を受け取る個人側の税金
  • 社会保険料:企業・個人双方に関係する保険料

役員報酬と法人税の関係

法人の役員に対する役員報酬は、損金算入されるため経費とみなされます。そのため、役員報酬を拠出することで、法人税の税対策として有効です。法人税と会社の経費となる役員報酬は、以下のような関係にあります。

  • 役員報酬が多い:法人税は低くなる
  • 役員報酬が少ない:法人税は高くなる

役員報酬が多いということは、必要経費として資金を多く支出していることになり、結果として会社の利益が少なくなります。企業の利益が少なくなるため、法人税が減るのです。

一方、一定の利益があるのも関わらず役員報酬が少ない場合には、企業内に資金がとどまる状態となり、法人税の課税価格が増えるため法人税は高くなるという仕組みです。

法人税だけを見ると役員報酬は多いほうがいいように見えます。しかし実際は、それほど単純ではありません。役員報酬を受け取る役員側にとっては、役員報酬が増えれば増えるほど個人に課せられる税負担が増加するからです。

役員報酬と所得税の関係

役員報酬と報酬を受け取る役員個人の所得税には、以下のような関係があります。

  • 役員報酬が多い :所得税も高くなる
  • 役員報酬が少ない:所得税も低くなる

所得税は、累進課税の仕組みです。つまり所得が多いと、それだけ税金も高くなります。役員個人が受け取る手取り金額だけを考えると、役員報酬は低いほうが個人の税負担は低くなるのです。

役員報酬を極端に減らす場合、納税額は当然ながら減ります。しかし役員報酬は役員個人の所得にあたるため、あまりに少ない役員報酬では役員個人の生活が成り立ちません。バランスが重要です。

役員報酬と社会保険料の関係

法人の役員や従業員は、社会保険に加入し、この場合の社会保険料は法人と個人が折半して支払います。

社会保険のうち健康保険料は、報酬の金額によって50階級に分かれています。

厚生年金保険料も同じく報酬により32等級に分かれています。いずれも報酬額が高くなるほど、保険料は増加する仕組みです。

つまり、役員報酬が高くなると、その分個人が負担する社会保険料も増えるというわけです。同時に、法人が負担する社会保険料も増えます。健康保険や年金制度には加入義務があるため、必ず支払わなければなりません。しかし、金額が大きくなると、企業側と個人いずれにとっても負担が増加します。

役員報酬で節税する方法

法人が「役員報酬を経費として算入し利益自体を下げること」は、税対策のひとつとして有効に働きます。

ただし、役員報酬を経費として算入できるのは、以下の3つの方法に限られます。これら以外の方法での役員報酬の場合、仮に支払ったとしても経費として計上できません。

ここからは、役員報酬を経費に算入できる3つの方法を解説します。

【役員報酬を経費に算入できる3つの方法】 

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業務連動給与

定期同額給与

定期同額給与とは、毎月支払われる給与が同額である給与体系です。金額は、新しい事業年度が始まってから3ヶ月以内に決定する必要があります。

原則として定期同額給与による役員報酬では、1度決めたら同一事業年度中に金額の変更はできません。ただし著しい業績悪化など認めるべき理由がある場合には、変更可能です。

事前確定届出給与 

事前確定届出給与とは、あらかじめ決められた時期に、決められた額の給与を支払う給与体系です。給与を支払う時期や金額は、事前に税務署へ申告しておく必要があります。

税務署への届け出は、事前確定届出給与を定めた株主総会等の決議をした日、または、職務の執行を開始する日のいずれか早い方から1か月を経過する日、もしくは会計期間開始日から4カ月を経過する日のうち、いずれか早い日です。

新設法人の場合は、その設立した日以降2カ月を経過する日が提出期限とされます。

業務連動給与

業績連動給与とは、法人の業績に連動して給与が支払われます。前述の定期同額給与および事前確定給与と異なる点は、支払われる給与が決まっていないという点です。

対象となるのは、同族会会社以外の法人で、有価証券報告書を提出しているなど一定の要件を満たしている場合のみです。報酬額の金額をいくらにするかは、法人の業績や役員個人の所得などから総合的に判断する必要があります。

役員報酬を経費として算入するときの注意点

役員報酬を経費として算入するときに、主に以下の3点にご注意ください。具体的には、役員報酬の金額や変更が中心です。特に、法人税に対する税対策として役員法主を活用する場合には、適正な金額の設定と税制上不当とみなされることのないようにしなければなりません。

【役員報酬を経費として算入するときの注意点】

  • 役員報酬を不当に高額にすることは認められない
  • 役員報酬は年度途中で変更しない
  • 役員報酬は節税効果が高い適切な額がある

役員報酬を不当に高額にすることは認められない 

役員報酬の金額は、法人が自由に設定することが可能です。前述のように、役員報酬が大きい場合には、法人税の節税効果があります。

しかし、税務署により役員報酬が不当に高額であると判断された場合には、損金算入が認められないことがあります。結果として、損金算入が認められなかった部分も課税されかねません。

税務署から不当に高額であると判断される主な基準として、形式基準実質基準が挙げられます。

形式基準とは、前述の各給与体系に基づく必要な書類や届出等に基づいているかどうかという基準です。

実質基準とは、役員報酬をもらう役員の法人内の職務内容にふさわしいかどうか。会社の業績、同規模の同業他社の役員報酬などから総合的に勘案される基準です。

役員報酬は年度途中で変更しない

役員報酬の金額を年度の途中で変更すると、損金として計上できなくなる場合があります。利益に応じて役員報酬を適宜変えることを許してしまうと、不正に利益をコントロールできてしまうからです。

不正に利益をコントロールしていると疑われてしまうと、節税どころの話ではなく違法行為とみなされかねません。疑わしい行為は絶対にやめましょう。

役員報酬は節税効果が高い適切な額がある

役員報酬の金額は、高いほど良い訳ではありません。役員報酬は会社の利益額に応じて、適切な額となる目安があります。

役員報酬が高すぎると・・・・

・      法人税は下がる

・      個人にかかる税金が高くなる

・      社会保険料も高くなる

・      役員の手取りが少なくなる

・      経費として認められない可能性がある

 

役員報酬が低すぎると・・・・

・      法人税が高くなる

・      役員の手取りが少なくなる

役員報酬を節税目的で高くすることには、もうひとつデメリットがあります。役員報酬を受け取る役員個人の所得が増えるため、個人所得税等が高額になる点です。結果として、法人税は抑えられたとしても役員個人の税額が増えます。

これらのことから、役員報酬は適正なバランスを意識して設定することを心がけましょう。

役員報酬で節税効果を最大化するにはシミュレーションが重要!

役員報酬はただ多くすればいいわけではありません。節税効果を最大化したい場合には、法人が受けられる節税効果と、役員個人が支払うことになる税金とのバランスをとりつつ、個人と法人からの手取り額が最大になる金額を考える必要があります。

具体的に役員報酬をいくらに設定すべきかは、法人の利益がいくらあるかによって異なります。以下に法人利益ごとのシミュレーションを提示しますので、目安としてみてください。

法人利益が500万円の場合

法人利益が500万円だった場合のシミュレーションは次のとおりです。

役員報酬

0円

300万円

500万円

所得税・住民税

0円

189,000円

410,7700円

社会保険料

(個人負担)

137,124円

449,100円

748,500円

法人税

1,179,700円

416,800円

70,000円

社会保険料

(法人負担)

137,124円

449,100円

748,500円

個人と法人を合計した

手残り金額

3,546,052円

3,495,800円

3,015,300円

役員報酬はできるだけ低く抑えたほうが、コストを抑えられることが分かります。

法人利益が800万円の場合

法人利益が800万円だった場合のシミュレーションは次のとおりです。

役員報酬

0円

300万円

800万円

所得税・住民税

0円

189,200円

997,500円

社会保険料

(個人負担)

137,124円

449,100円

1,179,300円

法人税

1,925,300円

1,102,000円

70,000円

社会保険料

(法人負担)

137,124円

449,100円

1,179,300円

個人と法人を合計した

手残り金額

5,804,052円

5,810,600円

4,573,900円

法人利益が800万円の場合、役員報酬は300万円くらいに設定すると節税効果が最も高いことがわかります。

法人利益が1,500万円の場合

法人利益が1,500万円だった場合のシミュレーションは次のとおりです。

役員報酬

0円

300万円

800万円

1500 万円

所得税・住民税

0円

189,200円

997,500円

3,282,300円

社会保険料

(個人負担)

137,124円

449,100円

1,179,800円

1,586,700円

法人税

4,485,000円

3,266,200円

1,417,800円

70,000円

社会保険料

(法人負担)

137,124円

449,100円

1,179,300円

1,586,700円

個人と法人を合計した

手取り金額

1,024,752円

10,646,400円

10,226,100円

8,474,300円

法人利益が1,500万円の場合、役員報酬は300万円~800万円くらいに設定すると個人と法人の手取り額が最も大きく、節税効果が高いことがわかります。

このように、役員報酬を適正な水準に設定することによって節税効果を享受でき、個人・会社ともに手取り額を最大化できます。

但しその前提として、役員報酬には様々なルールがあります。もし役員報酬の損金算入が否認された場合、法人税と所得税を二重で支払わねばならなくなってしまいます。

役員報酬は適正な水準に設定することが大切です。税理士や信頼できる専門家に相談してみましょう。

まとめ

役員報酬は、法人の規模や業績などから適正な金額を設置することで最も高い節税効果が発揮できます。

役員報酬の決め方には3パターンありますが、自社にとってどれが良いかはあらかじめ想定しておきたいポイントです。また、役員報酬は原則として年度途中の変更はできません。

不当に高額な報酬額を設定すると、損金算入ができなくなる可能性があるためご注意ください。法人と個人にかかる課税関係について把握し、双方にとってメリットがあるような適正な役員報酬を決定することが大切です。

トータス・ウインズでは、中小企業の税対策に関するご相談を幅広く承っております。お客様の考えを尊重し、最適なアドバイスをいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

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