保険アンサー

運営:株式会社トータス・ウィンズ

中小企業の保険の
悩みを解決する
メディア

HOME/ 税対策/ 【東京 税対策 最新ニュース】税務署が激怒する「3つの危険行為」【実例紹介】

【東京 税対策 最新ニュース】税務署が激怒する「3つの危険行為」【実例紹介】

税対策

ニュース概要

橘慶太:税理士

人生100年時代、お金を増やすより、守る意識のほうが大切です。相続税は、1人につき1回しか発生しない税金ですが、その額は極めて大きく、無視できません。家族間のトラブルも年々増えており、相続争いの8割近くが遺産5000万円以下の「普通の家庭」で起きています。
本連載は、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所を学ぶものです。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。大増税改革と言われている「相続贈与一体化」に完全対応の『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】 相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』を出版する(発売は5月17日)。遺言書、相続税、贈与税、不動産、税務調査、各種手続という観点から、相続のリアルをあますところなく伝えている。

税務署が激怒する「3つの危険行為」【実例紹介】Photo: Adobe Stock

 税金に無頓着だった人が、何かの拍子に節税に前向きになったときほど、アグレッシブな行動を起こす傾向があります。

 ある事例をもとに、税務署から目をつけられやすい「3つのアグレッシブさ」をご紹介します。

【事例紹介】

 2022年4月19日、最高裁より「相続開始の直前に購入した不動産は、明らかに相続税を少なくすることを目的としたものであり、このような不動産を路線価方式や、固定資産税評価により評価することは、他の納税者との間に非常に大きな不公平が生ずるため、不動産鑑定士が評価した金額で相続税を再計算し、相続税を追加で3億円納税しなさい」という衝撃的な判決がでました。

「納税者は、国が公表しているルールブック通りに相続税を計算していたのに、そのルールを国が自ら否定するとは何事か!」と、実務家の中でも物議を醸しました。しかし私は、このケースでは、あまりにも露骨な相続税対策と言われても仕方ない部分があると思っています。

 国が定めているルールブックには、「【財産評価基本通達第6項】この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という規定があります。このケースでも第6項が適用されたので、広い意味ではルールの範囲内であるとも言えます。最高裁判決で、なぜルールブックの評価が否定され、第6項が適用されたのかについて解説します。時系列は次の通りです。

① 銀行へ相続税対策の相談(2008年5月)
② 孫を養子縁組(2008年8月)
③ 不動産Aを8.3億円で購入(2009年1月)※借入6.3億円
④ 不動産Bを5.5億円で購入(2009年12月)※借入4.3億円
⑤ 相続発生(2012年6月)※不動産A評価額2億円、不動産B評価額1.3億円で申告
(相続税0円)
⑥ 遺産分割協議成立(2012年10月)
⑦ 不動産Bを5.1億円で売却(2013年3月)

 不動産Aは8.3億円で買ったものが、相続税評価額は2億円。不動産Bは5.5億円で買ったものが、相続税評価額は1.3億円。購入した金額と比べると、評価額は約4分の1まで減少しています。

 この購入額(時価)と評価額の差により、相続税は0円。当然、国税も黙っておらず、最高裁においては国税側が勝利しました。この判決のポイントは、大きく3つ挙げられます。

 1つ目は、銀行に相続税対策の相談をした直後に孫と養子縁組をし、不動産を購入した点です。アドバイスの内容や時期を鑑みると、相続税を減らすための購入であることは明白でした。驚くべきことに、国税庁は「銀行がどのようなアドバイスをしたのか」も正確に把握していました。国税庁の調査能力のすさまじさがうかがえますね。

 2つ目は、銀行が不動産購入資金の貸し付けを行った際、社内の稟議書に「相続税対策目的の不動産購入」と書かれていた点です。税務調査では、こうした銀行の内部資料までもがチェックされます。これで、不動産を購入する目的が相続税対策であることが裏付けられたのです。

 3つ目は、相続が開始してから、わずか9ヵ月後に不動産を売却した点です。相続開始の3年前に購入し、相続開始後9ヵ月で売却しているという一連の流れを見ると、明らかに相続税を減らすことを目的とした取引に見えます。この3点を総合的に見て、不動産購入の主たる目的は相続税対策であると判断されたのです。

 では、この事例から税務署から目をつけられやすい「3つのアグレッシブさ」をご紹介します。

「3つのアグレッシブさ」

①時間のアグレッシブさ
 先の例では、被相続人は90歳から91歳にかけて2つのマンションを購入し、相続人は被相続人の死後わずか9ヵ月で1つのマンションを売却しています。あまりにも期間が短く、「それは節税のためだけでは?」と言われても仕方のない行為として税務署に目をつけられます。

②金額のアグレッシブさ
 節税額が大きければ大きいほど、税務署から目をつけられます。先の例では、2つのマンションを約14億円で購入しましたので、本来なら3億円ほどの相続税が発生します。しかし、相続人はこれを「0円」として申告しました。

③行為のアグレッシブさ
 先の例では、わざわざ金融機関から10億円を超える融資を受けてまでマンションを購入しています。節税対策としてはあまりにもアグレッシブといえるでしょう。

相続税対策は、穏やかにゆっくりと

 時間、金額、行為、どのアグレッシブさが最も危険なのか? この質問に答えはありません。国税は、相続税対策をしている人たちの「アグレッシブランキング」のようなものをつけていると考えられます。そしてその上位の人たちに目をつけ、少しずつ外堀を埋めていき、アグレッシブな節税を取り締まっているのでしょう。

 相続税対策は穏やかに、そしてゆっくり進めるのが望ましいといえます。

(本文の続きは、以下のリンク先にあります)