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法人保険の受取人は遺族と法人どちらがいい?経理処理の方法と受取人の決め方のポイント

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法人保険の受取人は遺族と法人どちらがいい?経理処理の方法と受取人の決め方のポイント

公開日 2023年10月31日 更新日 2023年10月31日

法人保険に加入する際、受取人を誰にするかによってその後のお金の流れが変わります。また、加入する保険商品によっても受取人の取り扱いが変わり、経理処理の方法も変わってくるので、注意が必要です。

この記事では、法人保険の受取人について、経理処理や課税の観点から解説します。保険商品ごとに具体的な経理処理もご紹介しますので、これから保険加入を考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

法人保険は受取人によって経理処理・課税が異なる!

法人保険は、受取人を誰にするかによって経理処理の方法や発生する税金の種類が異なります。基本的に契約者を法人とし、被保険者は従業員や役員であるケースが一般的です。

一方、死亡保険金受取人などに関してはいくつか選択肢があり、加入時に選択できます。受取人として指定できるのは「法人・被保険者・被保険者の遺族」のいずれかであるケースがほとんどです。

ただし、法人保険と一口に言っても終身保険や養老保険など種類はさまざまであり、保険の種類によって経理処理も変わってくるため注意が必要です。

法人保険の種類別の支払い保険料の経理処理方法

ここでは、4つの法人保険の種類別に、支払った保険料の経理処理方法をご紹介します。

  • 定期保険の場合
  • 養老保険の場合
  • 第三分野保険の場合(医療保険・がん保険)
  • 終身保険の場合

定期保険の場合

法人保険のうち、定期保険の経理処理については、次のとおりです。

受取人

経理処理の方法

損金の割合

法人

支払い保険料

一部算入可能

遺族または被保険者

給与

一部算入可能

定期保険の場合、保険金受取人は法人か従業員の遺族にかかわらず、一部を損金算入できます。損金算入の割合と、経理処理の方法は次のとおりです。

養老保険の場合

養老保険とは、生死混合保険のひとつで、生存時に満期保険金として支払われる金額と死亡時に遺族に支払われる金額が同額である点が特徴です。法人保険における養老保険の経理処理は、次の表のとおりです。

死亡保険金受取人

生存保険金受取人

経理処理の方法

損金の割合

法人

法人

保険積立金

全額資産計上(損金なし)

遺族

被保険者

給与

全額損金

遺族

法人

半分を保険積立金

半分を福利厚生費

保険料の半分のみ損金算入(福利厚生部分)

医療保険・がん保険(第三分野保険)

医療保険やがん保険など第三分野保険の経理処理は、次のとおりです。

受取人

経理処理の方法

損金の割合

法人

支払保険料

一部損金算入

遺族または被保険者

福利厚生費

一部損金算入

さらに、第三分野保険の場合、支払期間によっても経理処理の方法が違います。

保険の支払い期間

経理処理の方法

全期払い

法人保険の定期生命保険と同様の経理処理を行う

短期払い

年間保険料支払い:30万円以下

一人あたりの年間支払保険料が30万円以下の場合、全額を損金計上

年間保険料支払い:30万円以上

一人あたりの年間支払保険料が30万円を超す場合、保険料の一部のみを損金計上、残りを資産に計上

終身保険の場合

法人保険として終身保険に加入している場合の経理処理は、次のとおりです。

死亡保険金受取人

経理処理の方法

損金の割合

法人

保険料積立金

全額資産計上(損金割合なし)

遺族

給与

全額損金計上

法人保険の保険金を受け取ったときの経理処理方法

法人保険における、受け取った保険金の経理処理方法について以下の2通りに分けて解説します。

  • 受取人が遺族の場合
  • 受取人が法人の場合

受取人が遺族の場合

法人保険において、法人は受取人が遺族の場合、給与として処理します。そのため、別途特別な処理は必要ありません。

ただし、次の2点については取り扱いが異なるため、注意してください。

  • 配当金積立がある場合
  • 養老保険の場合は注意

配当金積立がある場合

資産計上されている配当金積立金などがある場合には、その金額を取り崩し、雑損失として損金算入します。また、保険金や解約返戻金を受け取る場合、個人に対する一時所得の対象となり、課税される点に注意が必要です。

養老保険の場合は注意

養老保険の場合は、受取人によって経理処理の方法が変わります。

  • 死亡保険金受取人 被保険者の遺族
  • 生存保険金受取人 被保険者

この場合、法人が経理処理を行う必要はありません。ただし、資産計上されている配当金積立金等がある場合には、その額を取り崩して損金算入します。

  • 死亡保険金受取人 法人
  • 生存保険金受取人 法人

この場合は、死亡保険金や生存保険金の受取時に、それまで資産計上していた保険料積立金を取り崩します。

  • 死亡保険金受取人 被保険者の遺族
  • 生存保険金受取人 法人

この場合、死亡保険金受取の際は、資産計上していた保険料積立金を雑損失として損金計上します。生存保険金受取時には、今まで資産計上していた保険料積立金を取り崩さなければなりません。さらに、満期保険金と保険料積立金の差額を雑収入として益金算入します。

受取人が法人の場合

法人保険において、受取人が法人の場合、保険金受取時までに保険料積立金として資産計上してきた金額を取り崩します。

さらに、保険料積立金と実際に受け取った保険金・解約返戻金などに差額がある場合には、差額について雑収入または雑損失として算入するため注意してください。

法人保険の受取人は法人か遺族どちらがいい?

法人保険の受取人を遺族と法人どちらにすべきかは、一概に断言できません。加入時の年齢や法人の経営状態、取り巻く環境などを総合的に検討する必要があるからです。

一般的に、法人の受取人を選ぶ際は、法人の利益や将来のビジネス計画などを優先して考慮することになるでしょう。ただし、遺族の生活が困窮する可能性があるような場合には、あらかじめ遺族を受取人に設定する選択肢もあります。

誰を受取人にすべきなのか自社だけで決められない場合もありますので、専門家にアドバイスをもらいながら検討すると良いでしょう。

ここからは、法人保険の受取人を法人にした場合と遺族にした場合に分けてポイントをご紹介します。ただし、あくまで一般的な例にとどめてください。

  • 法人保険の受取人を法人にする場合
  • 法人保険の受取人を遺族にする場合

法人保険の受取人を法人にする場合

法人が受取人になる場合、知っておきたいポイントは以下の2つです。

【法人が受け取った場合に知っておきたいポイント】

  • 事業存続のために使える
  • 役員の退職金として使える
  • 相続や事業承継の資金として使える

法人保険の保険金等を法人が受け取った場合、法人の事業存続の資金に充当できます。

たとえば、法人役員を被保険者とした法人保険に加入していた場合で、死亡保険金受取人を法人にしたとしましょう。

万が一、プロジェクトの中心となっている役員が死亡した場合、法人の事業運営全体を一時中断せざるを得ないかもしれません。このような場合でも、役員の死亡保険金が法人に支払われるため、事業運営の資金面は確保できます。

同様に、役員退職金の原資としても活用できます。法人の代表者が死亡した場合の死亡保険金は、相続や事業承継の資金としても活用されます。

法人が受取人になる場合は、保険加入時にあらかじめ出口戦略、つまり受け取る保険金の使い道を想定しておくことが大切です。

法人保険の受取人を遺族にする場合

法人保険において遺族が受取人になる場合、知っておきたい主なポイントは次の3つです。

【遺族が受け取った場合に知っておきたいポイント】

  • 遺族の生活費などに使える
  • 事業の資金として使うには制約がある
  • 遺族が受け取った場合は遺族に相続税が課せられる

法人保険の保険金受取人を遺族にする場合、遺族の生活費として充てることが可能です。受取人は、保険加入時にあらかじめ指定します。ただし、保険金支払事由が発生した際に、保険金を事業資金に使うためには制約が発生する点に注意しなければなりません。

また、遺族が保険金を受け取る場合には、遺族に対して相続税が発生する可能性にも注意が必要です。

まとめ

法人保険の受取人を法人にするか遺族にするかについてはケースバイケースです。企業の経営状態や取り巻くリスク、キャッシュフローなどを総合的に検討して判断する必要があります。法人保険加入時には、出口戦略も含めて保険のプロと相談しながら進めると良いでしょう。

トータス・ウィンズには、法人保険に特化した長年の実績があります。豊富な知識と経験を有する保険のプロが在籍しており、法人経営者の皆さまに寄り添った最適なアドバイスをさせていただきます。法人保険についてお困りのことや不明点がございましたら、お気軽にトータス・ウィンズまでご相談ください。