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【東京 相続・事業承継 最新ニュース】タンス預金50兆円が狙われる!4月1日から銀行口座とマイナンバーが紐付けられる『口座管理法』とは…トラブル続出制度に新たな火種

相続・事業承継

ニュース概要

佐藤健太

 4月1日から預貯金口座のマイナンバー(個人番号)付番がスタートした。国が災害発生の際や相続時の利便性をメリットにあげる制度なのだが、自分の財産が「丸裸」にされると不安視する向きは少なくない。マイナンバーとの紐付けは義務ではないものの、金融機関は口座開設などの際に届け出を伺っている。

 経済アナリストの佐藤健太氏は「国から十分に周知されないまま開始され、金融機関からのお知らせにドキッとする人も多い。しっかりと制度を理解した上で口座との紐付け管理を考えるべきだ」と指摘する。

相続、災害発生時に便利なのがメリット

 付番の根拠となっているのは「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」(口座管理法)だ。2023年に成立した口座管理法は今年4月に施行され、本人の同意を前提に金融機関の預貯金口座とマイナンバー(個人番号)を紐付けて管理する。1度の申請で複数の金融機関に対する紐付け管理が可能になっているものだ。

 政府がメリットとしてあげるのは、①相続②災害発生時―の利便性である。緊急時の給付金受け取りのためにマイナンバーと預貯金口座を登録する「公金受取口座登録制度」を知っている人は多いだろう。事前登録しておけば、申請から給付までのスピードが格段に速くなり、不正受給の防止策としても有効とされている。

財産相続時の遺族のとてつもない負担は軽減される、災害時のメリットは言わずもがな

 4月からの口座管理法施行に基づく付番は別のものだ。国は預貯金口座とマイナンバーの「紐付け管理」によって①相続時に、相続人が被相続人の預貯金口座を把握しきれていない場合でもマイナンバーで口座情報が特定できる②災害の発生時は、避難先の金融機関でマイナンバーに基づいて口座情報を確認できるため、別の金融機関であっても現金を引き出すことができる―というメリットをあげている。

 たしかに相続が発生した際、亡くなった人の口座情報すべてを調べるのは大変だ。1つや2つの口座であれば足を運んだり、電話や郵送で照会したりすることは難なくこなせるだろうが、ネットバンキングを含めて多くの口座を保有していれば、遺された家族らの手間と時間は膨大なものとなる。

 たとえ、「1円」しか残高がなくても相続時にやらなければならない作業であり、マイナンバーによる紐付け管理があれば、すべての口座を漏れなく把握することができるだろう。従来は「どこに」「いくら」残っているのかを探すだけでクタクタになる人も多く、相続財産調査時の負担は大きく軽減されるはずだ。

 災害時のメリットは言わずもがな、である。東日本大震災や年始の能登地震を見るまでもなく、大災害の発生時は着の身着のまま避難する人が多い。身近にキャッシュカードやクレジットカードを入れた財布があれば良いが、避難先まで“丸腰”で何とかたどり着いた人は厳しい生活を強いられることがある。マイナンバーに基づき別の金融機関でも現金が引き出せるメリットは大きいと言える。

マイナンバーカード保有枚数は3月末時点で人口の約74%にあたる9216万枚

 先に触れたように、マイナンバーの紐付け管理は義務ではない。各金融機関は希望した人に手続きしている状況で、実際に登録するかしないかはそれぞれの意思に委ねられている。ただ、ネットバンキングの利用時や口座を開設する際にマイナンバーを登録した人も多いはずだ。2024年1月からは新NISA(少額投資非課税制度)がスタートしたが、開設申し込みにはマイナンバー提出が必要になる。これらのケースは紐付けられると思った方が良い。

 わが国のマイナンバーカード保有枚数は3月末時点で人口の約74%にあたる9216万枚に上っている。この割合を考えればわかるが、紐付け管理が進むと日本の口座情報はほとんどカバーされることを意味する。

健康保険証の情報を住民基本台帳と照合した結果、氏名などが一致しないケースは約140万件…相次ぐトラブル

 では、マイナンバーの紐付け管理による懸念点はあるのか。マイナンバーと預貯金口座が紐付けられると、国や自治体は口座情報を把握することが可能となる。そうなれば、税金の強制引き落としや預金残高などの監視がなされるのではないかと嫌悪感を抱く人もいるだろう。だが、デジタル庁はこうした行為を否定する。そもそも、税務署は紐付け管理がされていなくても口座情報をチェックでき、特に「新たな武器」が与えられたというわけではないのだ。

 トラブル続きのマイナンバー制度によって、財産情報が他人に漏れる可能性はないのかという点も気になるだろう。政府が紐付けられた健康保険証の情報を住民基本台帳と照合した結果、氏名などが一致しないケースは約140万件に達した。別人の情報が紐付けられるミスは約450件存在し、公金受取口座が本人ではない名義になっているケースも約13万件発覚した。

 2016年に始まったマイナンバーカードの交付後、政府はマイナポイント導入など様々な普及策を講じてきた。ただ、次々に明らかになるトラブルは預貯金口座との紐付けを躊躇させる。SNS上ではマイナンバー制度によって「副業が会社にバレる」と不安視する向きもある。

新紙幣発行で50兆円のタンス預金があぶりだされる

 ただ、デジタル庁はマイナンバー制度で副業が判明するものではないとしている。住民税の税額は特別徴収額の決定通知書に前年の給与収入合計額が記載されており、勤務先が把握しようと思えば、現在でも副業の有無を知り得るからだ。

 それらの懸念点よりもポイントと言えるのは、今年7月に行われる改刷だ。20年ぶりとなる新しい紙幣の発行が間近に迫っているが、政府の狙いは紙幣の偽造防止とともに、50兆円に上るともいわれる「タンス預金」をあぶり出すことにある。自宅などに眠る紙幣は税務当局が詳細を把握するのが難しいが、金融機関で新紙幣と交換すれば全容がわかる。

 マイナンバーとの紐付け管理がなされていれば、いちいち金融機関に照会をかけるまでもなく税務署は容易に金の出入りを把握できるだろう。口座から頻繁に多額のお金が引き出されたり、振込されたりしていれば容易に怪しい動きをキャッチできる。たしかにマイナンバーによる紐付け管理によって相続時の利便性は高まるが、同時に相続する「資産」も細かくチェックされているという点は認識しておかなければならない点だ。

 政府は、将来的にマイナンバーカードの全機能をスマホに搭載できるようにしていく方針で、さらなる生活の利便性向上を目指している。ただ、あらゆる個人の情報が紐付けられていけばトラブル発生時の損失が大きくなるのは間違いない。まずは制度をしっかりと自分で理解した上で、どのような情報をいつまでに紐付けるのか検討することをオススメする。

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