世間ではおしどり夫婦、家庭内では…
Aさんは大手企業に勤めていた元常務、入社してから持ち前のコミュニケーション能力を活かし、着実に実力を発揮し、常務までのぼりつめました。一方、大人しい妻は同じ企業で契約社員として働いていたところ、Aさんと社内合コンで知り合い、結婚しました。
妻は結婚後、専業主婦となります。Aさんがエリートコースで昇進していたこともあり、子ども2人の子育ては妻に任せ、有名私立中学受験をさせ、基本的にエスカレーターで大学まで進学できる学校に通わせていました。世間では「エリートで働く夫、内助の功の妻」のおしどり夫婦として誰もが羨む家族として近所でも噂されていました。
しかし実際は、妻が大人しい性格ということもあり、会話の少ない夫婦でした。さらにAさんがエリートコースに進めば進むほど、家には寝るために帰るだけ。休日は接待ゴルフなどで外出が多くなります。妻は子育て一筋になり、夫婦の会話は子どもの教育費(お受験)の話のみとなっていました。
高所得エリートサラリーマンの貯蓄額が少ないワケ
家計のやりくりは、毎月定額を生活費として妻に渡し、やりくりさせていました。子どもが受験期になったころは教育費が足りないと言われ、余分に生活費を渡していました。子どもの受験が終わると、妻は昼間の空き時間にパート勤めをはじめます。
Aさんは定年間近に常務となり、65歳の定年退職で受け取る退職金は3,000万円となりました。お受験から大学までの教育費や下宿代などがかさみ、高所得層にしては少なく、貯蓄額は3,000万円です。さらに接待のために安物のスーツやノーブランドのゴルフウエアなどでは体裁が悪いため、有名ブランドを購入していたことも貯蓄額が少ない要因の1つです。
老後の年金は報酬が高いこともあり、夫婦の年金は330万円(月額27万5,000円)です。
・Aさん
老齢基礎年金:81万6,000円
老齢厚生年金:163万1,146円
・妻
老齢基礎年金:81万6,000円
老齢厚生年金:3万5,517円
※老齢基礎年金は2024年度新規裁定者の満額。差額加算、加給年金、振替加算を考慮せず。Aさん夫婦の平均標準報酬月額はAさん62万円、480月と妻18万円、36月で計算。
公益財団法人生命保険文化センターの調査では、必要な日常生活費は月23万2,000円、ゆとりある生活は月額平均37万9,000円となっています。こちらを踏まえると、年金のみで日常生活は賄えそうです。子どもは独立したので、お金はかかりませんが、接待が多かったAさんの交際費は退職することで解消されると考えますが、そもそもAさんがゴルフや飲み会が好きであるため、回数を減らすなどして節約できるかが問題です。