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【東京 相続・事業承継 最新ニュース】海外勤務を経験したあと、2ヵ国に財産を残し日本に帰国…相続人は日本、ドイツ、ベルギーからの課税があるのか?

相続・事業承継

ニュース概要

矢内 一好

欧州ではベルギー在住でパリが仕事場というように2ヵ国を拠点にしているケースが少なくありません。日本において新幹線通勤をする会社員と同様の感覚です。海外勤務のあとに日本に戻り、2ヵ国で不動産を遺した場合の相続税はどうなるのでしょうか。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。

海外勤務で2ヵ国の不動産を所持

日本居住者が外国2ヵ国に財産がある場合の相続税の問題について考察します。

被相続人のAさんは日本居住者であり、同居する配偶者Bさんとフランクフルト所在の法人に勤務する長男Cさんが相続人です。

Aさんは長年ドイツに居住してドイツ法人に勤務していたことから、フランクフルトに住宅1棟とベルギーのブリュッセルにマンションを保有していました。現在、長男Cさんとその家族がこれらを使用しています。

Cさんのドイツ勤務は5年程度です。Aさんはこれらの在外財産以外に、日本に自宅と預金等を保有しています。配偶者Bさんと長男Cさんは、日本における相続税とともに国外の不動産の課税がどうなるのか不安な状態です。

なお、Aさん、Bさん、Cさんはともに日本国籍であり、遺産に関して国内の財産はBさんが、国外分はCさんが相続します。

ベルギー居住者かどうかが課税のポイント

では、ベルギー、ドイツの相続税についてみていきます。

ベルギーは遺産課税方式を採用しており、被相続人のAさんがベルギー居住者かどうかということが第1のポイントになります。

Aさんは日本居住者で、かつベルギー非居住者であることから、ベルギー所在の不動産にのみ相続税が課されることになります。Aさんは欧州経済領域以外の国である日本の居住者であるので、不動産に関係する債務の控除が認められません。

ベルギーの街並み(※写真はイメージです/PIXTA)

ドイツは相続税の納税義務者かどうかで大きく変わる

ドイツにおいては、無制限納税義務者なのか制限納税義務者によって大きく変わります。

被相続人(贈与者)または相続人(受贈者)のいずれかが被相続人の死亡時においてドイツの居住者である場合は「無制限納税義務者」として全世界の純財産が相続税の課税対象とされます。

一方、被相続人または相続人のいずれもドイツの居住者でない場合は「 制限納税義務者」として、ドイツ国内にある財産のみが課税対象になります。ドイツ国内に住所または居所を有する場合、居住者となります。居所の判定では、2暦年の間に連続して6ヵ月以上ドイツ国内に滞在することが条件です。

配偶者であるBさんは制限納税義務者、ドイツ在住のCさんは無制限納税義務者となります。

◆基礎控除額

基礎控除は以下のとおりです。

① 配偶者等:50万EUR(為替レート140円で約7,000万円)
② 子(代襲相続の場合の孫):40万EUR
③ 孫:20万EUR

◆適用税率

 適用税率は3つに区分されています。

① 配偶者、直系卑属(相続の場合のみ)、直系尊属等(クラスⅠ):7~30%

② 直系尊属(贈与の場合)、兄弟、甥、姪等(クラスⅡ):15~43%

③ その他(クラスⅢ):30~50%

Cさんは、ドイツにおいて無制限納税義務者であることから、ドイツおよびベルギーの不動産についての課税があることになります。仮にベルギーで納税する場合、ドイツとベルギー間には相続税租税条約の締結がないことから、ドイツの相続税法に規定のある外国税額控除が適用となります。

日本における相続税

日本における相続税は、Bさんが無制限納税義務者、Cさんが非居住無制限納税者であり、Aさんからの相続財産に課税されます。

この場合、相続税の配偶者控除の適用等を考慮に入れないとすると、Bさんは国内の財産だけの相続であることから、国外財産へのドイツおよびベルギーの課税の影響はありません。

日本は、米国以外の国と相続税租税条約を締結していません。日本の相続税法第20条の2の規定では、財産の所在地国以外の国(本件ではベルギー)の法令により外国相続税が課税されたときの二重課税の調整についてまでその対象とするものではないと解されています。

したがって、ドイツ所在の財産に係る税額は日本で外国税額控除の対象となりますが、ベルギーの財産に課されたドイツの相続税は二重課税の調整の対象になりません。

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

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