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【東京 相続・事業承継 最新ニュース】遺言書が「手書きじゃなくてもOK」になる?デジタル遺言解禁に向け、相続のプロも商機を狙う

相続・事業承継

ニュース概要

ダイヤモンド編集部 大矢博之:副編集長

改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識#11

手書きでないと認められなかった遺言書が、パソコンなどで簡単に作成できるようになるかもしれない。デジタル遺言の解禁に向けた議論が法務省で始まった。そして、一部の相続のプロたちは、解禁に備えて早くも動きだした。デジタル遺言解禁に向けた課題は何か。特集『法改正で知らない間に損をしない! 相続・贈与・実家の新常識』(全13回)の#11では、デジタル遺言を巡る最新動向を追った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)

AIが遺言書の作成を支援してくれる?
デジタル遺言解禁狙いサービス開発

「誰にどのように財産を分けたいかはもうお考えでしょうか? 例えば、配偶者やお子さんに多く残したいとか、特定の人に一部を贈りたいといったご意見があれば、教えていただきたいです」

「配偶者には多く残したい」

「ありがとうございます。それでは、配偶者さまにはより多く、お子さまにも一部を残すという方針で、遺言書を作成する提案をさせていただきます。以下のように作成するのはいかがでしょうか?」

 パソコンの画面上にチャット形式で会話が表示される。氏名や住所、家族構成や財産などの質問に答えていくと、自宅や現預金などの相続財産を配偶者や子供にどう分ければいいかが提案され、遺言書のひな型ができていく。これは相続専門の税理士法人や行政書士法人を抱えるレガシィマネジメントグループが開発中の、生成AIを活用して遺言書の作成を支援するサービス「AIユイゴン」(仮称)だ。

「2023年5月に政府がデジタル遺言制度の本格的な検討をすると報じられ、われわれも相続のデジタルサービス開発を積極的に進めるべきだとプロジェクトを立ち上げて取り組み始めた」

 こう語るのは税理士法人レガシィ代表の天野大輔氏だ。AIユイゴンは、ChatGPTなどのAIモデルを利用できる米マイクロソフトの「Azure OpenAI Service」を活用して開発しているという。類似のサービスは既に存在しているが、売りとなるのは、長年相続を手掛けてきたレガシィが蓄積した独自データで学習させた点だ。

「人生をどのように過ごしてきましたか?」「財産の由来は?」などといった、遺言書の内容に直接関係しなくとも、相続の実務を円満に進めるために押さえておくべき重要なポイントをAIが会話の流れで質問する。AIが提案する遺産の分け方も、これまでの経験から“もめにくい”配分を示しているそうだ。また、遺言書の本文の他にも、親族への思いを伝える付言事項や手紙を作成してくれるという。

「デジタル社会の今、遺言書の作成はアナログで非効率な部分が多い。今は10%以下の遺言書の普及率を、AIユイゴンで手軽にすることで50%まで高めたい」と語る天野氏は、デジタル遺言の解禁に備えて準備を進めている。

 法務省は4月、法制審議会の部会でデジタル遺言の解禁に向けた議論を始めた。そこでは「高齢化社会の到来で、簡便に遺言を作成する必要性も高まっている。デジタル技術は日常生活に欠かせない手段となり、手書きで文書を作成する機会は少なくなっている」と指摘した上で、「デジタル技術を活用した新たな遺言の方式に関する規律を整備することを中心として、遺言制度の見直しを検討する意義がある」と掲げている。

 果たして、デジタル遺言はどんな形で実現するのか。次ページではデジタル遺言の議論の行方と課題、そしてデジタル遺言解禁で生まれそうな新ビジネスについて動向を追った。

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