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【東京 税対策 最新ニュース】「国税はいつ見解を変えたか」 信託型SO考案者が“経緯”明かす

税対策

ニュース概要

鷲尾 龍一 他1名
 
スタートアップが優秀な人材を集めるために使う「ストックオプション(SO、株式購入権)」。その一種である「信託型SO」を巡り国税庁が5月、税率20%の譲渡所得課税ではなく最大55%の給与所得課税であるとの方針を示し、スタートアップ業界はパニック状態に陥った。すでにSOを株式に転換した当事者は過去に遡って、追加納税を迫られる可能性が高い。2014年に信託型SOを考案したのが、松田良成弁護士。同氏は日経ビジネスのインタビューに応じ「国税庁は当初、2種類ある信託型SOを区別していたはずなのに、途中で見解が変化した」と疑問を呈した。
 
松田良成[まつだ・よしなり]氏
松田良成[まつだ・よしなり]氏
漆間総合法律事務所、所長弁護士。2002~08年に森綜合法律事務所(現森・濱田松本法律事務所)に所属し、その後投資ファンド勤務も経験。14年に信託型SOを開発したことで知られ、スタートアップの資本政策などに精通する。18年に信託型SOを手掛ける信託会社を設立(20年開業)。(写真=小林淳、以下同)

信託型SOを考案した経緯について教えてください。

松田良成弁護士(以下、松田氏):私がバイオベンチャーに管理担当取締役として在籍していた頃、社長から「役職員(役員と社員)へのインセンティブをどう付与しようか」と相談を持ち掛けられたのが発端です。彼は(経営する企業の株式の)持ち分を多く持っていましたが、「自身のシェアにはこだわらないので、貢献してくれた役職員に株をあげたい」と考えていました。

経営者が保有する自身の株式を、役職員に贈与したいという思いから始まったと。

松田氏:先日、ある外食チェーンを運営する上場企業の創業者が、自身の保有株を社員に無償で譲渡されました。これと同じような思いと言えるでしょう。一方で、株式を渡した後すぐに退職したり、パフォーマンスが落ちたりした場合は、オーナー社長としては渡した株を返してもらいたいと思ってしまうのもまた当然の心情でしょう。しかし、渡した株を返してくれと言えば訴訟になりかねない。それならば、いったん信託に新株予約権を預けて、その後で付与することができないかと考えたわけです。

信託型SOはオーナー経営者の気持ちに応える商品

通常のSOは、その目的にそぐわなかったのでしょうか。

松田氏:通常のSO、つまり直接発行のSOには使いづらい面があります。というのは、会社への貢献度にかかわらず入社年次が早い方が多くの報酬を得る仕組みになっているからです(編注:スタートアップは成長に伴い株価が急上昇しやすく、後で入社した人は権利行使価格、すなわちSOを普通株に転換する際の価格が高くなりやすいため)。

 信託型SOは、SOを付与する対象や付与する数量を「後決め」できるのが特徴です。SOを一時的に信託が取得・管理しておき、将来、受益者(SOを受け取る人)が決まった段階で交付します。入社後のパフォーマンスを評価してから、その貢献度に応じて付与することができます。

開発当初、国税庁などに問い合わせはしなかったのでしょうか。

松田氏:スキーム自体は、私が考えたのですが、上場準備中の企業の取締役であったため、外部の銀行に商品として提供してもらえないかと依頼し、承諾いただきました。14年に1号案件として実施されましたが、適切に商品審査が行われたものだと認識しています。

 先ほど申し上げた通り、信託型SOは、オーナー経営者が役職員に株式を贈与したいという気持ちから生まれました。株式を受け取って、これからも頑張ろうと思う人もいれば、もらった分は減らないから頑張らなくていいやと思う人もいる。信託型SOは頑張っている姿を見たうえで渡したいというオーナーの気持ちに応える商品だと思っています。

先行きが見えないスタートアップに先んじて入社するリスクを取った人こそ、SOを多くもらうべきだ。そうした環境が整えば、スタートアップ市場が盛り上がるという記事を先日掲載しました。考え方が異なるということでしょうか。(関連記事:日本のストックオプションは「論功行賞」になってしまっている

松田氏:そうですね。個人的には、入社が1年早いか遅いかで収入が大きく増減するという、運不運に左右されるリターンよりも、役職員の会社への貢献が正当に評価され、報われるような仕組みの方が納得感・公平性が高いと思います。また、スタートアップ市場の盛り上がりの観点からも重要だと思います。

 弁護士としてSOにまつわる依頼を受けることもありますが、お金も人もない創業期に雇った人に対し、SOを多く渡したのに、実際に働いてもらうと当初の想定より能力が物足りず、後からもめるといった事例は少なくありません。

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