大切なものを保管する貸金庫
貸金庫とは、銀行などに備え付けられている金品の保管箱です。金融機関や貸金庫の大きさなどによっても異なりますが、月々数百円~数千円程度で利用ができます。
昨今では、自宅に高額なものを置いておくには防犯面から不安があるといった理由などから、貸金庫を利用する人が多くなっています。また、万が一、自宅が火災になった場合や水害を受けた場合でも、重要な書類や現金などを貸金庫に預けておけば、大切な財産を守ることができます。
貸金庫にはさまざまなタイプのものがあり、金庫の中に入る大きさのものであれば発火の恐れがあるものや腐敗の恐れがあるものなど以外は、何でも預けられます。そのため、預金通帳や有価証券の証書、契約書、権利書、貴金属、コレクションなどの重要書類や貴重品のほか、思い出の品などを預け入れることも多いようです。
貸金庫が税務調査の対象となる理由
相続税についての税務調査では、被相続人が貸金庫を利用していた場合、貸金庫についても調査が行われます。なぜ、税務調査では貸金庫も調査の対象とするのでしょうか。
■そもそも、相続税の課税対象とは?
まず、相続税の課税対象となる財産の範囲は、現金や預貯金、有価証券、土地や建物などの不動産、宝飾品など、経済的な価値を持つすべてのものです。
また、生命保険の保険金や死亡退職金、被相続人から生前に相続時精算課税の適用を受けて取得した贈与財産、加算対象期間内に被相続人から暦年課税にかかる贈与によって取得した財産なども相続税の課税対象となります。
したがって、貸金庫の中に現金や預貯金、有価証券、保険証券などの財産が入っていた場合、それらも含め、相続税の申告をしなければならないのです。
■税務署は、被相続人の預金口座や有価証券に関する情報を把握済み
人が亡くなり、自治体に死亡届を提出すると、自治体は死亡届に記載されている内容を税務署に通知しなければなりません。そのため、税務調査では相続の発生状況について、必ず把握できるようになっています。
税務署では、確定申告の状況などから、故人の生前の所得情報についても把握しています。また、税務署には亡くなった人の預金口座の内容や残高を金融機関に照会する権利があります。そのほか、証券会社からは特定口座年間取引報告書が税務署に提出されているため、被相続人の財産状況についても詳しく把握できる状況が整っているのです。
■預金口座の照会をすれば貸金庫の情報がわかる
銀行の貸金庫を利用する場合、利用料は預金口座から引き落とされます。したがって、税務署が被相続人の預金口座の取引状況の照会を要求すれば、貸金庫の利用料が引かれていることを簡単に確認できるのです。
貸金庫の利用を確認すれば、税務署ではわざわざ利用料を支払ってでも保管しておきたいものがあるのではと考えるでしょう。そのため、税務署では被相続人の財産状況と相続税の申告内容を確認し、疑わしい場合には税務調査を行い、貸金庫の利用があるようであれば貸金庫についても調査を行うのです。
相続時には貸金庫を必ず確認
被相続人が貸金庫を利用していた場合、税務調査が入ったときに貸金庫の存在を隠しきることはできません。また、相続手続きには期限が決まっているものもあり、相続税の申告についても、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行わなければなりません。
したがって、相続が発生したときには貸金庫の利用があるかどうかを早めに確認することが大切です。
■貸金庫を開けるには「相続人全員の同意」が必要
貸金庫は、原則として契約者本人しか開けることができませんが、被相続人が亡くなった場合は、相続の権利を有する人が貸金庫を開ける必要があります。しかし、相続人であっても簡単に貸金庫を開けることは許されません。契約者が亡くなった後に契約者以外の人が貸金庫を開けるときには、相続人全員から貸金庫を開けることについての同意が必要です。
金融機関によって必要な書類は異なりますが、遺産分割協議書や相続人全員の同意を示す書面のほか、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、貸金庫の鍵やカードなども必要になるケースが多くなっています。
また、金融機関によっては必要書類の提出だけでなく、貸金庫を開けるときに相続人全員の立ち会いを求めるケースもあります。
■ただし、遺言執行者の指定がある場合は単独での解錠も可能
遺言書があり、遺言書の中で貸金庫の扉を開ける執行者が指定されている場合は、相続人全員の同意がなくても、遺言執行者が単独で貸金庫を開けることや中身を確認することもできます。
<貸金庫の中身の確認と申告方法>
貸金庫を解錠し、中に入っているものを確認したら、必要に応じて相続税の申告を行います。
現金の場合は、そのまま正しく計上し、預金通帳が入っていた場合には、相続が開始された時点の残高を計上します。
また、被相続人名義の不動産の権利証などが入っていた場合には相続税評価額、宝飾品については相続開始時点での時価額の形状が必要です。生命保険証書が入っていた場合は、契約内容に応じて計上を行います。
■「申告後」に貸金庫の存在に気が付いた場合は…?
被相続人から貸金庫について事前に情報を得ていた場合や遺言書で貸金庫に触れられていた場合は、スムーズに貸金庫の解錠手続きや相続税の申告手続きができるでしょう。しかし、貸金庫を利用しているということを知らされていないケースでは、貸金庫の存在に気が付くまで時間がかかることもあるかもしれません。
相続税の申告を終えた後に貸金庫の中に財産が入っていたことが発覚した場合は、早急に正しい申告書を作成し、申告をし直す必要があります。
■税務調査で貸金庫の指摘を受けた場合、追徴課税となる可能性も
税務調査が入るまで貸金庫の存在に気が付いていなかった場合や、貸金庫に気が付いたものの修正申告をしていなかった場合、追徴課税がなされる可能性があります。
税務調査時に申告の誤りを指摘され、本来納めるべき税額よりも申告・納税をした額が少なかった場合、ペナルティとして過少申告加算税が課せられます。過少申告加算税の額は、新たに納税することになった税額の10%です。ただし、新たに納税する額が当初の申告納税額または50万円のどちらかよりも多い場合は、超過分に対しては15%に当たる額を納税しなければなりません。
■税務調査前に自主的な修正申告をすれば、過少申告加算税は免除
たとえ申告期限が過ぎている場合でも、税務調査の事前通知が入る前に自主的に修正申告を行った場合は、過少申告加算税は免除されます。
また、税務調査の事前通知を受けてから自主的に修正申告をした場合も税率が軽減され、50万円までは5%、50万円を超える部分については10%の税率が適用されます。
相続税の申告期限の前に、貸金庫の存在を確認しておくことが大切ですが、万が一、申告期限後に貸金庫の中に財産が見つかった場合は、税務調査の連絡が来る前に自主的に修正申告を行うようにしましょう。また、税務調査の事前通知が入った場合は早急に税理士に相談し、税務調査が行われる前に自主的に修正申告を行うことをおすすめします。
貸金庫の財産も含めて正しく申告を行うこと
税務署には、金融機関に対して預金口座の情報の提供を求める権利があり、貸金庫の利用についても情報を把握できます。そのため、税務調査では貸金庫も調査の対象になります。税務調査が行われ、貸金庫の財産についての申告が漏れていたことが発覚した場合、過少申告加算税の納付が課せられます。
税務調査で貸金庫の情報を隠しておくことはできません。貸金庫の利用が分かっている場合は、貸金庫の財産も含めて正しく申告を行うことが大切です。また、貸金庫の財産について申告を行っていない場合には、税務調査が入る前に早めに税理士に相談し、自主的に修正申告を行うようにしましょう。
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【東京 税対策 最新ニュース】税務調査で初めて発覚⇒あえなく追徴課税も…「相続人さえ知らない貸金庫」が税務署にバレるワケ【税理士が解説】
ニュース概要
相続を受けた人の中には、預金や不動産などについてはしっかり申告をしていても、故人が契約していた貸金庫について税務調査の手は及ばないのではと考える人もいるかもしれません。しかし、貸金庫の中に課税対象となる資産が保管されている可能性もあり、税務調査時には貸金庫も調査の対象となります。税理士法人松本が、貸金庫がある場合の相続時の注意点について解説します。
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
そして金融・保険に携わるプロとして、何よりお客様に対する誠実さ・真心・信頼関係より大切なものはないと考えています。
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