都市に林立するタワーマンションが宅配便やフードデリバリーなどの配達員を苦しめている。1棟に多くの世帯が集まっているので一見、効率的に配達できそうだ。だが、現実は全く異なる。

 「セキュリティーをはじめ、様々なルールがある。手間と時間がかかり、過疎地の配達より大変なケースも多く、赤字が前提だ。別料金をもらいたいくらいだ」。ある大手宅配事業者の関係者は声を上げる。ドライバーの時間外労働時間の上限が4月から制限され、人手不足などの「2024年問題」に直面している物流業界にとって、タワマンへの宅配は切実な問題となっている。

 

 日鉄興和不動産(東京・港)が大手物流会社に集配の実態をヒアリングしたところ、東京都内のタワマン(約50階・約1000戸)の1日あたりの集配では、配達27件、集荷5件、不在5件で、計255分かかったという。このうち、エレベーターの待ち時間と乗っている時間だけで全体の3分の1にあたる87分を費やした。それを含めマンション内の移動で全体の5割近くを占めた。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00167/102400021/?ST=yahooImage&n_cid=nbpnb_pvyr

なぜここまで屋内の移動に時間がかかるのか。

 配達先の数だけ行ったり来たり

 タワマンへの配達では通常、配達員は住民とは異なる入り口を通り、警備室で受け付けをする。この際、警備室から配達先の住民が在宅か不在かを確認する。在宅であれば、台数が限られる事業者用のエレベーターを利用することが多い。このエレベーターは他の宅配会社や清掃業者、修理業者などと共用のため、しばしば長い待ち時間が発生する。

 配達先のフロアに着いても、戸数が多く、広いタワマンでは配達先を探すのに時間がかかる。この一連の流れを、配達先の数だけ警備室での在宅確認から延々と繰り返さなければならない。

 物件によっては1個の配達でセキュリティーを複数回クリアする必要がある。ある宅配大手が、比較的セキュリティーが厳しいタワマン(50階建て以上・約600戸)で作業の流れを調べたところ、1個の配達に30分以上かかっていた。こうした事例は決して例外的ではないという。

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