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【東京 経済 最新ニュース】日本国民は売られた。岸田首相「訪米の成果」で得する人損する人…戦争、経済破綻、異常な未来はこの後すぐ

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新聞はおろか地上波ワイドショー番組までもが手放しで褒めちぎる、岸田総理の「訪米の成果」。だが、めくりフリップを駆使して解説される「良好な日米関係」には、芸能スクープ然とした印象とは裏腹に多くの罠が潜んでいる。米国在住作家の冷泉彰彦氏は、防衛面で近い将来リアリズムを伴わない“利敵保守”イデオロギーが台頭する恐れを指摘。さらに国内経済面でも大半の一般労働者にとってマイナスの影響が生じうると警鐘を鳴らす。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2024年4月16日号より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:岸田訪米と日米関係の現在地

YOASOBIまで担ぎ出した岸田総理は、どんな「成果」を上げたのか

岸田総理大臣が予定通り訪米しました。直前の状況としては、支持率は地を這うような状況が続く中で、4月の補選は3選挙区中2つが不戦敗確定、一方で処分した安倍派の元幹部からは不満タラタラということで、内閣としては最悪でした。

そんな中での訪米ですから、世論的には「税金使って漫遊旅行」「天皇を差し置いて国賓気取り」「英語ジョークで滑りまくり」というような批判が噴出してもおかしくなかったわけです。

その意味では、世論はそんなに関心を持たなかったわけで、予想よりはややプラス寄りの反応だったとも言えます。

漠然とした印象としては、日米関係が良好であることは、どこか世論の心理の琴線に触れる部分としては、悪い気はしないということだったのかもしれません。かといって、この訪米の「成功」によって、支持率がアップするかというと、そうした力学は働いていないようです。

つまり国内世論との関係、国内政局との関係ということでは、これだけ大掛かりな訪米であった一方で、影響は限りなくプラマイゼロという感じがします。大統領専用車に同乗してニヤけた自撮りをしても、身の毛もよだつような軽薄さが満開である反面、やっぱり日米は緊密なら安心という感じが相互に帳消しになっているようです。

YOASOBIまで担ぎ出して、日米の若者の反応を取り込もうとしたのは、恐らくは空振りなのでしょう。ですが、ご両人の人気と権威は「ホワイトハウスに引っ張り出された」ぐらいでは傷はつかないのでこれまたプラマイゼロという感じがします。

岸田訪米を「1.対中関係、2.アメリカ政局、3.日本経済」の観点で評価すると

それはともかく、では、今回の首脳会談というのは全く意味がなかったのかというと、そんなことはありません。下らないスピーチや軽薄な写真などとは別のところで、本質的な3つの問題が問われていると思うからです。

1つ目は、中国との関係です。日米が緊密であることは、基本的に抑止力になります。中国は台湾に軍事侵攻をかける可能性は低いですが、それでも日米で抑止力を維持しておいて、暴発の可能性を抑え込むというのは必要な措置です。

また、香港があのような形になったのは、不動産投資の巨大な負債を抱えた国営銀行を政治信用力で維持すると中南海が決意した中では、「見せしめ」的な形を取らざるを得なかったことには合理性はあるのだと思います。これに対して、日米が自由と民主主義の立場で対抗するというのは、台湾やASEANに安心感を与えるという意味でも必要です。

ですから、総論としては何も間違っていないのですが、問題はメッセージが強すぎるのであれば、中国には不快感を与えるということです。勿論、イデオロギーが違い、軍事外交の抑止力で均衡を保つというのは、物理的なエネルギーとしては対抗しているわけですから、敵味方的な力学になるのは仕方がありません。

けれども均衡があり、その均衡しているという全体構図が、当事者双方に理解されているのであれば、当座の危険はないし、中長期の危険も管理できるということになります。その限りにおいては、危険性は十分許容範囲です。

ですが、そのような当事者間の理解が欠落していると短期的、あるいは中期的に問題を生じる可能性が出てきます。あまり多くの方が指摘しているわけではないのですが、一つ私がとても恐れているシナリオがあります。

“利敵保守”イデオロギーが跋扈する恐れ

それは、日本国内で「改憲、自主防衛、軍拡」を進める必要が出ていく中で、こうした政策に対して平均的な日本の世論は消極的である一方で、抑止力強化のためには「保守イデオロギー」の推進力が必要になるという流れです。

その「保守」というのが限りなくリアリズムであるのならいいのですが、例えば枢軸日本の名誉回復だとか、21か条要求以降の対中政策の正当化などを伴っていると、これは仮想敵を勢いづかせてしまいます。

そんな中で、過剰に自己正当化を行ういわゆる歴史修正がある臨界点を超えると、いとも簡単に日本と米国、あるいは日本と欧州の紐帯を切り離す事ができてしまいます。

【関連】なぜ自衛隊の「大東亜戦争」呼称は“利敵行為”にあたるのか?右派の甘えと精神的コスプレ 日本存立を脅かす重大脅威に

対中国の抑止力は必要であり、その維持は必要です。ですが、この種の「利敵行為になる保守イデオロギー」だけが推進力になるようですと、最終的には向こう側が正当性に自信を持ってしまい、更に米欧との離反工作を進める動機を持ってしまうという危険な状況になってしまいます。

抑止力の確認と維持は必要ですが、そのことを進めると悪しき「保守」が拡大してしまう、その結果、利敵と孤立を呼び込んでしまうというのは、パラドックスに違いありません。そして、非常に難しい方程式だと思います。難しさの一端には、危険な歴史修正に反対する勢力の問題があります。彼らは、残念ながら抑止力を維持する責任や必要性を軽視するわけで、違った意味での利敵効果や均衡の破壊をやってくるからです。

この方程式といいますか、連立不等式には実は重なる解はないのかもしれず、個人的にはその辺りには悲壮な思いを持っているのも事実です。それはともかく、とにかく対中の抑止力の話についてはそうした危険性を感じます。

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