日米に共通するお金の悩み 「老後資金」が断トツ!
公開日 2021年10月15日 更新日 2021年11月11日
プレジデントオンラインに、「「14〜22歳の9人に1人が老後資金を貯め始めている」アメリカの若者に起きている大変化」という興味深い記事が掲載されていました。
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要約すると、こんな内容です。
・1996~2012年生まれの若者はアメリカで「Z世代」と呼ばれているが、彼らの価値観は私たちがイメージするアメリカ人像と大きくかけ離れている。
・世界的大不況、学費ローン問題、所得の伸び悩みという、国全体の経済を揺るがす事態に強い影響を受けていて、「両親や祖父母ほどの成功はできない」と考えている。
・大学ローンで苦労する親の世代を見て育ったので、奨学金かバイトで学費を工面する大学生が大多数。同様に、借金にも忌避感がありクレジットカード利用に慎重。
・すこし上のミレニアル世代がビットコインバブルに飛びついたような、ゴールドラッシュ思考には陥らない。
・Z世代は、社会保障が受けられず、老後資金確保の必要性に気づいている。最優先で貯蓄に取り組むべきだとZ世代の69%は考えている。
ここから垣間見えるのは、老後不安を身近なものと感じる若者の姿です。デジャブを覚えますが、これ日本人の将来不安に瓜二つだと思いませんか?
ノマドランドから見えるアメリカ人の老後の姿
シニア世代の貧困を描いたアメリカ映画といえば、「ノマドランド」が有名です。
2021年4月にアカデミー作品賞を受賞し、日本でも話題になりました。アメリカにおける、高齢者の貧困や低賃金労働という深刻な問題をテーマにした作品です。
この作品では、2008年のリーマンショックの影響で企業倒産や工場閉鎖が続いた結果、家も仕事も失った女性が、各地を放浪しながら日雇い暮らしを続ける様子がリアルに描かれています。
劇中には、リーマンショックで全て失った人や、長年の勤労にも関わらず年金が雀の涙で生活できない人たち。反対に投資でボロ儲けした人たちも出てきます。
悪意なく搾取する側と、どうしようもなく搾取される側という、アメリカという自由の国だからこその冷酷な一面が見受けられました。
この映画はあくまでフィクションですが、アメリカの悲惨なまでの貧富の差と将来不安は、現実のものとして存在します。友人(ニューヨーク在住20年以上)に聞いた話では、
「隣人夫妻は、老後資金として300万ドル(3.3億円)貯めることを目標にしている」
「ニューヨークでは一般的な労働階級でも、それくらい貯めないとお金に不自由しない老後は手に入らないと考えている」
ということでした。また冒頭の「Z世代」の老後資金への危機意識は、まだ20歳そこそこの若者達ですら、将来自分に降り掛かる深刻な問題と感じている証左といえるでしょう。
老後に大きな不安を抱いているのは、アメリカ人も日本人も同じ
翻って、日本人はどうでしょうか。
2019年に「老後2000万円」問題が大きな話題となったのは記憶に新しいと思います。
以前、当コラムの以下の記事でも取り上げましたが、日本の年金は賦課方式(現役世代がリタイア世代を支える仕組み)なので構造的に破綻しないと厚労省が公言しています。
しかし逆に言えば拠出方式ではないため、社会保険料を満額支払い終えていても、実際に幾ら年金が貰えるかはそのときになってみないと分かりません。
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国は一言でいえば、「国民全員は守れないから、自分で老後資金を作ってくれ」と言っているのです。
だからこそ、少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)などの税優遇制度の活用を推奨しているわけです。
そして、昨今のコロナ禍による所得の減少、働き方の変化もあって、日本国民の将来への意識は急激に高まっているようです。
以下、「QUICK資産運用研究所 2020年11月、全国の20~74歳の個人を対象にした「個人の資産形成に関する意識調査」から抜粋します。
画像の出典 : https://moneyworld.jp/210602/fix/05_00046372
「資産形成・資産運用の必要性を感じますか?」という質問に「非常に感じる・やや感じる」の割合は、2017年:37.6%に過ぎなかったのが、2020年:54.2%と大幅にアップしています。
特に、20~40代の現役世代で大きく関心が高まっているのが一目で分かりますね。
「資産形成・資産運用の必要性を感じる理由はなんですか?」という質問に対しては、老後不安がほぼ9割と圧倒的です。
次いで、銀行に預けていても増えない。なにせ銀行預金の普通金利は、2021/10現在0.001%です。
であれば、貯金や退職金・年金受取額などの想定合計から考えて、足りない分の老後資金積立を始めようと思うのはごく自然の流れです。
ところが、「将来もらえる予定の退職金や年金受取額をどの程度把握していますか?」という質問に関しては、50代でさえ半数以上が「あまり把握できていない、もしくは考えたことがない」、そしてその割合は20代だと9割近くになるという回答結果になっています。
とても矛盾しているようですが、日本の場合は曲がりなりにも公的年金制度が機能していて、国や仕事への不満はあれど(まぁ幾らか分からないけど貰えるだろうという程度には)信頼されているので、このような割合になったのかもしれません。
まとめ
アメリカと日本の、老後不安に対する意識についてお伝えしました。
「アメリカの若者が自分の老後資金に悲観的」という記事に対して、日本でも老後資金に不安を抱える人が多いのは同じですが、自分が受け取る予定の老後資金を正確に把握している人は50代で僅か8.6%、老後が間近な60代ですら27.5%にすぎないというデータがある訳ですから驚きです。
- 平和な日本で育ったから
- 年金制度がしっかりしているから
- 先のことだから後回しにしている
- 目先の生活や仕事で精一杯
色々な事情はあるかもしれませんが、将来に対して危機意識を持っているなら、まずはしっかり情報を仕入れるべきだと思います。
一方で、現代は情報収取や資金運用・副業など多様な稼ぎ方においては大変恵まれた時代です。インターネットを使えば、自分の保有資産、自国の仕組み、何をすれば稼げるか、海外の投資事情など大抵のことは調べられます。
あとは実際に行動するかどうかだけです。取り組んでダメなら修正するか、違うことをすればいいだけです。殆どリスクを取らずにできることも沢山ありますから、思い立ったらすぐにチャレンジしてみましょう!
【過去参考記事はこちら↓】
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
そして金融・保険に携わるプロとして、何よりお客様に対する誠実さ・真心・信頼関係より大切なものはないと考えています。
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