結婚したカップル、2000年80万組→2021年40万組に半減 超少子化が加速か
公開日 2022年2月2日 更新日 2022年3月23日
長期的な婚姻数の減少傾向が、コロナ禍によって更に加速
東洋経済誌のネット記事がYahooトップニュースにも取り上げられて、話題になっていました。かなり衝撃的な内容だったので、取り上げてみます。
◆「結婚する男女の激減」が招く日本の恐るべき末路
この記事を要約すると、以下のような内容です。
- 日本の婚姻数の推移は、コロナ禍前の2019年:59万9007組が、コロナ禍で大幅に減って2020年:52万5490組(前年比-12.3%で戦後最少)だったが、2021年はさらに減って40万組に届くかどうかというショッキングな数字になりそう。
- 「コロナによる一時的な現象で、コロナが終息すれば戻るでしょ」と思われがちだが、実は大きな誤り。
- 婚姻数は1970年の102.9万組から、2000年79.8万組、2010年70.0万組、2020年52.5万組と、長期的にもコロナ関係なく大きく減少している。
- 中長期的な婚姻数減少の原因は、独身志向の高まりや少子化で結婚適齢期の人口が減少していることなどが考えられるが、いまの独身世帯がコロナ禍で出会いのきっかけを失い、更に将来の収入を見通しにくい状況で「結婚しよう!」という気に果たしてなるだろうか?
今回は、結婚する男女の数と少子化の関係性について書いていきます。
出会いの機会もコロナで失われた
上記の記事で指摘されているように、わずか20年ほど前の2000年に約80万組だった婚姻数が、2021年には40万組を割り込む水準まで落ち込んでいるというのですから、いかにただならぬ事態か分かりますね。
2020年以降の、「新しい生活様式」への変化が、婚姻数の減少に拍車をかけているように感じます。
結婚するには当たり前ですが男女の出会いが必要です。しかし、コロナ対策の行動制限や、学校休校・オンライン講義への移行、さまざまなイベント中止・飲食店の営業制限やテレワークの普及など、あらゆる男女の出会いの機会が激減しています。
結婚に至るには、出会うだけでなくお互いを深く理解するために、一般的に年単位のお付き合いの時間が必要だと思います。
しかし、マスクでいつも顔が見えない相手のことを好きになれるでしょうか。相手といっしょにいられる時間や機会を大幅に制限されて、愛が深まるでしょうか。
2019年より前からのお付き合いならまだしも、コロナ禍中で合コンもないでしょうから、以前と比べて格段に将来のパートナー探しが難しくなっているのは想像に難くありません。
再び記事から引用すると、
「男女が出会ってから結婚するまでの平均交際期間は、4.34年(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」)です。コロナが終息した直後の年は50万組台を回復するかもしれませんが、2019年までに出会っていたカップルの結婚がピークアウトし、コロナ時代になって出会ったカップルの結婚が主流になると、2025年以降、婚姻数は再び激減します。」
と指摘されています。
テレビや新聞などではコロナ禍の蔓延状況の報道ばかりであまり大きく取り上げられていませんが、これは大変なことだと思います。
コロナ対策の人流抑制が、ついに国の人口動態に影響を及ぼすようなところまで来たかという印象です。
結婚する男女の激減は、超少子化に直結する
日本の場合、婚姻数と生まれる子どもの数には強い因果関係があります。こちらの記事で日本の非嫡出子率は約2%と指摘されているように、基本的に男女が結婚しないと子どもが生まれないからです。
わが国では長らく少子化と言われていますが、結婚した男女が子どもを欲しがらなくなったのか?といえばそんなことは無いと思います。
厚生労働省が発表している、「令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」から図表を引用してみます。
この表中の1989年と2019年の比較をみれば、新生児の出生数は125万人→87万人(-30.4%減)と大幅に減っていますが、合計特殊出生率は1.57→1.36と減少してはいるものの、そこまで大きくはありません。むしろ2000年代に入ってからは、ほぼ横ばいか少し改善傾向にあることが分かります。
つまり、1組の結婚した男女から生まれる子どもの数は、ここ20年ぐらいはほとんど変わっていないということです。
さらにこちらの民間のアンケート調査によれば、
独身者への「結婚したら子供は何人欲しい?」という質問に対して、「将来的に子供が欲しいと思っている方の55.9%が2人以上欲しい」と回答した
という結果が出ており、少子化が進んでるとはいうものの「結婚さえ出来れば2人程度の子どもが欲しい」という意欲は決して衰えていないことが示されています。
ですがこれは、あくまで「もし結婚できたら」の話です。上記の厚生労働省の調査によれば2019年時点で、2040年の出生数(推計)74万人となっていますが、もし仮に婚姻数がこれから平均して年間40万組程度で推移したらどうなるでしょうか。
合計特殊出生率が、表中の仮定値(なぜか上昇していますが)1.43だったとすれば、出生数は40万人×1.43=57.2万人となってしまいます。
コロナ禍前の2019年に初めて出生数が90万人を割り込んで86万人となったことが「86万ショック」と話題になり、さらにコロナ禍を経て、2021年の出生数は80万5千人程度にまで下がったと報じられたばかりですが、その数値すら遥かに下回ってしまうのです。
その年に生まれた新生児の数=出生数ですから、後から増えることは絶対にありません。
結婚したカップルの数、出産適齢期の女性の数が今後さらに減っていけば、状況はさらに悪化し続けることでしょう。
まとめ これから確実に実社会への影響が出てくる
経済学者や社会学者の中には
- 人口減少・少子化しても、生産性を向上すれば国力を維持することは可能
- 欧州などの事例を見れば、人口減少しても1人あたりGDPが向上している国はいくつもある
と主張されている専門家もいますが、これほど急激な婚姻数・出生数の減少に見舞われた事態は前代未聞で、過去に例がないと思います。
「コロナ禍における婚姻数の減少」は世界中で普遍的な潮流なのかもしれませんが、こと30年以上も経済停滞が続く日本で、更に追い打ちをかけるように少子化に歯止めがきかないどころか加速しているとなれば、もはや国家存亡の危機に足を踏み入れ掛けているのでは、と感じてしまうのは私だけでしょうか。
こういった人口構造の大きな変化は、今後さまざまな社会現象となって日本に居住するすべての人に影響してくることになるでしょう。
少子化が叫ばれて久しいですが、実はまだまだ序の口で、これから本格的に実社会へ影響が出てくると考えたほうがよさそうです。
個人レベルでどうにかできる類の問題ではありませんが、ご自身のビジネス・生活・人生にどう影響してくるか、頭の片隅に置いておきたいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
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