日本人は国際的に低い給料の本質をわかってない
公開日 2021年10月6日 更新日 2021年11月11日
一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による、東洋経済オンラインのタイトル記事「日本人は国際的に低い給料の本質をわかってない」が、Facebook上でシェア9000越えとバズっていたので、取り上げてみます。
日本の賃金はアメリカの約半分で、韓国より低い
詳しくは記事をご覧いただきたいですが、要約するとこんな内容です。
・OECD加盟諸国の年間平均賃金額の2020年データによると、アメリカ6万9391ドルに対して日本3万8515ドルでアメリカの55.5%でしかない。
・韓国の賃金は4万1960ドルであり、日本の値はこれよりも低い。2020年において日本より賃金が低い国は、旧社会主義国と、ギリシャ、イタリア、スペイン、メキシコ、チリぐらいしかない。日本は賃金水準で、いまやOECDの中で最下位グループに入っている。
・イギリスのエコノミスト誌が公表している「ビッグマック指数(各国のビッグマックの価格を比較したもの)」を比較するとアメリカ5.65ドル、ユーロ圏5.02ドル、韓国4.0ドル、日本3.55ドルとなっていて、賃金の国際比較とほぼ同じ比率となっている。
・日本人の賃金が国際的に低いという状態は、昔からそうだったのだろうか?というと実は全くそうではない。
・アベノミクスが始まる前の2010年のビッグマック指数を比較すると日本は3.91ドルで、アメリカの3.71ドルやイギリスの3.63ドルより高かった。日本より高かったのは、スイス、ブラジル、ユーロ圏、カナダだけだった。韓国は3.03ドルで、日本より低かった。つまり、日本人は国際的に見て、アベノミクスの期間に急速に貧しくなってしまったことになる。
・こうなった理由は、実質賃金の推移をみればわかる。年間平均賃金額について2000年に対する2020年の比率を見ると、韓国は1.45倍、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスは約1.2倍。ところが、日本は1.02でしかない。この20年間、日本では実質賃金がほとんど上昇せず、かつ円安になったために日本の地位は低下したと考えられる
※ビッグマック指数については、こちらのサイトに詳しく解説されています。
ビッグマック指数が教えてくれる「最も物価が安い先進国」日本
わたしが社会人になった2002年当時、日本人の平均給与は430万円ぐらいだったと記憶していますが、こちらの記事によると、2021年最新の日本人平均給与は436万円で約30年もの間、殆ど変わっていません。
日本人の賃金は長期間変わらず、その一方で海外の物価・労働者賃金は大幅に上がっているために、日本の購買力が相対的に大幅に低下しているという訳です。
しかし、個人的には「日本は先進国のなかでも物価が安い国になっている事実」・・・これがあたかも日本の没落・国が亡びるというように結び付けられるのを疑問に思います。
コロナ禍前の2019年にはインバウンド需要で、訪日観光客は3,188万人と過去最高を記録しました。
残念ながらコロナ禍で、国をまたぐ越境移動が難しくなったことで世界的に観光需要が激減していますが、コロナ終息に伴い、時間は掛かれどいずれ戻ると考えるのが自然です。
なぜかといえば「外国人から見て、日本の物価がとても安くてお得な状況は変わっていないから」。
いまやビッグマック指数でもわかるとおり、日本は先進国のなかで最も物価が安い国のひとつになっています。
近未来の日本は果たしてどうなる?
一昔前は、「老後は物価の安い東南アジアなどで悠々自適な生活を過ごしたい」という人も少なくありませんでした。
実は私の父も2015年ごろまではマレーシア移住を真剣に考えていたフシがありましたが、最近はめっきり聞かなくなりました。
海外移住は、富裕層の節税や言語教育など特定の目的を除き、安い生活コストを目的とするのであれば、そのメリットはもはや急激に薄れつつあります。
考えてみれば1990年代~2000年代くらいまでは、日本の物価は世界的に高いというのが常識でした。
それに日本は当時から変わらず世界有数の治安の良さを誇り、あらゆるサービスレベルや平均的な教育水準が高い国ですが、加えて物価の面でも急激に暮らしやすくなっているといえると思います。
これから先考えられるのは、日本よりはるかに高い水準で経済発展を遂げている新興諸国が、いつか日本と同水準あるいはそれ以上の購買力を持つようになるであろう近未来の姿です。
このまま日本が停滞しつづけて10数年もしたら、日本よりインドネシアやマレーシア、フィリピンといった東南アジアの国々のほうが物価が高くなっているかもしれません。相対的に差が無くなりつつあることを、もはや受け入れるしかないのです。
とはいえ・・・、私たちは日本に生まれてきて不幸でしょうか?世界有数の治安が良い国で、サービスレベルは高く、物価も安く、基本的に何をするのも自由です。2020年からのコロナ禍は大変な事態ではありましたが、いまのところ日本は、世界的には最も感染者数・死亡者数ともに抑えられている国のひとつです。
少子高齢化・人口減少・経済の衰退などこれから本格化してくるであろう問題はありますが、ずっと前から確実に来ると予見されている問題ですから今更大騒ぎすることでもないと思います。
平均賃金の推移から、国際的地位が低下していく未来が垣間見える中で、これから日本がどんな国を目指していくか。国が没落とか滅びるとか、そんな悲観的な煽りよりも、現状を踏まえてコロナ禍以降の建設的な国づくりをどう実現していくか具体的に議論されるほうがよほど大切だと思います。
岸田新首相は就任早々「令和版所得倍増計画」を提唱していますが、そのためには日本が持続的な経済成長を実現することが必要不可欠です。
さて日本は失われた30年を脱し、日本人の給料はこれから上昇に転ずることができるのでしょうか?
こういった話に対して、私も含めて一般人は日本を脱出するわけにもいかないので、
・日本国内の物価が大きく上昇もせず落ち着いていることに感謝しつつ、所得や資産の一部を海外投資に回す
・個人の仕事に対する生産性を上げて、どこにいっても必要とされるようスキルを磨く
ぐらいしか、できることはないのかもしれません。
デービッド・アトキンソン氏は「最低賃金引き上げで、日本は必ず復活する」と提唱したりしていましたが、伸び悩む日本人の賃金に対しては、今後もいろいろな話がでてくるでしょうね・・・。
ご参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
そして金融・保険に携わるプロとして、何よりお客様に対する誠実さ・真心・信頼関係より大切なものはないと考えています。
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