社用車の購入は節税になる?減価償却の仕組みや注意点をわかりやすく解説
公開日 2022年12月4日 更新日 2023年3月15日
会社で車の購入を検討する際は、「社用車ならでは」の選び方の特性をよく理解しておく必要があります。
会社で保有する自動車は固定資産になり、自社保有すれば減価償却の対象となります。社用車の減価償却の基本的な考え方を理解しておけば、そのタイミングや車種選び、購入・リースの選択にも役立つでしょう。
「業務で必要だから」「節税になるから」と安易に購入すると、車の使用頻度に対してランニングコストが高く、節税になるどころかかえって負担が増え、資金繰りに悪影響を及ぼすおそれがあります。
この記事では、社用車購入の検討に役立つ基本的な減価償却の考え方や、取得価額・耐用年数などのポイントをわかりやすく解説します。
目次
社用車の購入は節税になる?
事業目的で自動車を購入・取得すると、車の購入費の他、維持するための費用も経費にすることができます。経費計上できる主な車の費用としては以下のようなものがあります。
【経費計上できる車の費用】
- 車の購入費
- ガソリン代
- 高速代
- コインパーキング代
- 月極駐車場代
- 洗車代
- 租税公課(自動車税、自動車重量税など)
- 車検代
- 修理代
カーリースの場合は全額経費計上できる
自動車を購入するのではなくカーリースで車を利用している場合、リース代金は全額経費にできます。
なぜならリース車はリース会社の資産であり、自社の固定資産として扱われないためです。ですからリースであれば要件を満たして事業用に利用していれば、高級外車でも全額経費計上が可能です。
車の購入費用は減価償却による計上が原則
事業で使用する車のように、「購入金額が10万円以上で1年を超えて使用する資産」のことを固定資産と言います。固定資産は時間の経過等によって価値が減っていく性質があるため、「減価償却資産」とも言われます。
こうした減価償却資産は、購入した時期に全額必要経費にするのではなく、資産が使用可能な全期間(耐用年数)にわたり分割して費用計上していくことが可能です。この分割して費用計上する会計処理が「減価償却」です。
耐用年数は車によって異なる
耐用年数とは、固定資産が購入したときからあと何年使えるかという使用可能年数のことです。自動車の耐用年数は、税制上、法定耐用年数として自動車の大きさや種類、用途によって異なります。また中古の場合は、新車の耐用年数をもとにして、その都度計算が必要です。
【耐用年数の計算方法】
l 新車の場合:普通自動車は6年、軽自動車は4年 l 中古車の場合:(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数 × 0.2) |
<例:2年落ちの中古車(普通自動車)を購入したときの耐用年数>
6(普通自動車の法定耐用年数)-2(経過年数)+(2(経過年数)×0.2)=4.4
1年未満の端数は切り捨てとなり、この車の耐用年数は4年となります。
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法は、定額法と定率法の2つです。原則的に、法人は定額法、個人事業主は定率法を用いて処理しますが、計算方法を採用してから3年経過している場合は、期限までに税務署に届出をすれば変更することができます。
- 定額法:毎年の償却額が均等になる
- 定率法:償却額が一定の割合で減少する
定額法での計算方法
定額法とは、毎年一定額を減価償却していく方法で、以下の計算式を使用します。
定額法の減価償却費=取得金額 × 定額法の償却率 |
定額法の償却率は、耐用年数によって以下のようになります。
耐用年数 |
定額法の償却率 |
2年 |
0.5 |
3年 |
0.334 |
4年 |
0.25 |
5年 |
0.2 |
6年 |
0.167 |
【400万円で普通車を新車で購入した場合の計算例(定額法)】
年数 | 償却額 | 期末帳簿価格 |
1年目 | ¥668,000 | ¥3,332,000 |
2年目 | ¥668,000 | ¥2,664,000 |
3年目 | ¥668,000 | ¥1,996,000 |
4年目 | ¥668,000 | ¥1,328,000 |
5年目 | ¥668,000 | ¥660,000 |
6年目 | ¥659,999 | ¥1 |
定率法での計算方法
固定資産の残存価格に対して定率(一定の割合)で減価償却を行なう方法で、以下の式で計算します。
定率法の減価償却費=未償却残高 × 定率法の償却率 |
定額法の償却率は、耐用年数によって以下のようになります。
耐用年数 |
定率法の償却率 | 改訂償却率 | 保証率 |
2年 |
1.0 | – | – |
3年 |
0.667 | 1.0 | 0.11089 |
4年 | 0.5 | 1.0 |
0.12499 |
5年 | 0.4 | 0.5 |
0.10800 |
6年 | 0.333 | 0.334 |
0.09911 |
減価償却費が取得価格×保証率の金額を下回った場合は、改定償却率を使用します。
保証率とは、定率法が固定資産によっては減価償却の完了に時間がかかることから、最低限の償却額を確保するために定められた数値です。
【400万円で普通車を新車で購入した場合の計算例(定率法)】
年数 | 期首帳簿価額 | 償却限度額 | 期末帳簿価額 |
1年目 | ¥4,000,000 | ¥1,332,000 | ¥2,668,000 |
2年目 | ¥2,668,000 | ¥888,444 | ¥1,779,556 |
3年目 | ¥1,779,556 | ¥592,592 | ¥1,186,964 |
4年目 | ¥1,186,964 | ¥396,445 | ¥790,519 |
5年目 | ¥790,519 | ¥396,445 | ¥394,074 |
6年目 | ¥394,074 | ¥394,073 | ¥1 |
参考:国税庁
「4年落ちの中古車」が有利な理由
事業用の車を取得する場合、中古車を購入した方が税務上、がぜん有利です。これは、減価償却の特性上、耐用年数が短い方が1年で費用計上できる金額が高くなるためです。
なかでも「4年落ちの中古車の購入」が、節税対策としては最も効果的と言われています。実際にシミュレーションをしてみましょう。
(1)400万円の車を新車で購入した場合
車を購入した場合、耐用年数をもとに減価償却費を計算して、毎年経費を計上していきます。400万円で普通自動車を新車で買った場合、耐用年数は6年です。
年数 | 経費計上できる金額 | |
定額法 | 定率法 | |
1年目 | ¥668,000 | ¥1,332,000 |
2年目 | ¥668,000 | ¥888,444 |
3年目 | ¥668,000 | ¥592,592 |
4年目 | ¥668,000 | ¥396,445 |
5年目 | ¥668,000 | ¥396,445 |
6年 | ¥659,999 | ¥394,073 |
(2)400万円の車を中古で購入した場合
次に、400万円で普通自動車を中古で買った場合です。
先に紹介しましたとおり、2年落ちの中古車を400万円で購入した場合、耐用年数は(6年−2年)+(2年×0.2)=4.4年です。1年未満は切り捨となるため、耐用年数は4年となります。
年数 | 経費計上できる金額 | |
定額法 | 定率法 | |
1年目 | ¥1,000,000 | ¥2,000,000 |
2年目 | ¥1,000,000 | ¥1,000,000 |
3年目 | ¥1,000,000 | ¥500,000 |
4年目 | ¥999,999 | ¥499,999 |
新車のケースと比べてみると、同じ値段の車であっても、中古車の方が1年間に経費計上できる金額が高いので、節税効果が高いことがわかります。
(3)400万円の「4年落ちの中古車」を購入した場合
最後に、節税効果が高い4年落ちの中古車のケースを見てみましょう。
4年落ちの中古車を購入した場合、最短で経費計上ができるのです。そのため4年落ちの中古車は、節税効果が最も高くなります。
年数 | 経費計上できる金額 | |
定額法 | 定率法 | |
1年目 | ¥2,000,000 | ¥3,999,999 |
2年目 | ¥1,999,999 | - |
社用車を購入する時の注意点
社用車を購入検討するときに注意したい点は、以下の2点です。
【2つの注意点】
- 購入のタイミングが大事
- ローンで購入した場合は利息しか経費にできない
車を購入するタイミングが大事
ここで紹介しているシミュレーションは会計年度の初日で購入した前提で計算をしていますが、実際は必ず会計期間の初日に購入するわけではないでしょう。
ただ、購入時期が会計年度末に近づくほど、その年度に減価償却費として経費計上できる金額が少なくなってしまいます。例えば3月末が決算日の場合、3月1日に購入しても1ヶ月分しか費用計上ができません。
減価償却費を大きくして節税効果を最大化したいのであれば、会計年度の早い段階で購入を検討しましょう。
ローンで購入した場合は利息しか経費にできない
ローンで購入した場合は、減価償却の対象外になるので注意が必要です。
ローンだと、「経費にできるのはローン利用時に発生する利息部分のみ」です。
結局「社用車の購入で節税」は正しいか?
会社名義で社用車を購入する場合、購入代金や保険料、その他の細かい費用まで経費として認められます。従って、社用車の購入は節税に効果的と言えますが、場合によってはコストの無駄遣いになってしまう恐れもあるため注意も必要です。
もし業務にほとんど使わない社用車を購入すると、節税効果以上に無駄なコストが発生してしまいます。自動車の購入費用はもちろん、メンテナンス費用やガソリン代、駐車場代、税金などのランニングコストが毎月・毎年かかってくるため、下手をすると節税メリット以上の無駄が発生しかねません。
だから社用車の購入によって節税する場合には、「社用車の使用頻度」や「業務上のメリット」を慎重に確認しておくことが重要です。節税はあくまでコスト削減の手段にすぎません。手段と目的を混同しないよう慎重な判断を心がけましょう。
まとめ
社用車として購入した車は固定資産扱いとなり、減価償却によって経費計上されます。代表的な償却方法には、定額法と定率法があります。定額法は決められた期間内に一定額を計上し続ける方法で、定率法は初期の償却額がより大きくなる計上方法です。
できるだけ早く・多くの減価償却費を計上したい場合は、4年落ちの中古車を選んだうえで、定率法による償却を選択するのがおすすめです。社用車を購入か・リースかで迷ったら、会社が重視するポイントとそれぞれのメリット・デメリットを考慮して決定するといいでしょう。
税対策には法人保険の活用もおすすめ
この記事では事業用の車を使った税対策を紹介しましたが、その他に有効な対策としては法人保険を使った方法が挙げられます。法人保険は、経営者の万が一のリスクに備えながら、なおかつ支払った保険料の一部、または全部を損金扱いにすることもできます。
さらに解約時には「解約返戻金」という形で資金を取り出すこともできるので、ひとつの保険で一石二鳥、三鳥の役割を果たすことが出来るのです。
法人保険の効果的な活用に興味がある方は、国内10社以上の生命保険会社から「いいとこどり」の保険プランを提案する、トータス・ウィンズまでお気軽にご相談ください。
トータス・ウィンズは経験豊富な税理士や司法書士といった専門家や、各分野のパートナー企業と連携して、経営者さまの法人保険以外の税金対策や財務管理などのお悩みにも対応します。
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
そして金融・保険に携わるプロとして、何よりお客様に対する誠実さ・真心・信頼関係より大切なものはないと考えています。
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