外貨建て保険(米ドル建て保険)はやってはいけない?「超円安」局面での活用法を解説
公開日 2022年4月27日 更新日 2022年9月7日
外貨建て保険を検討するときに、必ず抑えておくべきポイント
2022年9月7日現在、為替市場は1ドル=144円台を突破する「超円安」状態で、もはや天井が見えない円安ドル高水準にあります。
もし今後も円安傾向が続くとしたら、外貨建て保険(米ドル建て保険)はどのように活用すべきでしょうか。
この記事では、
- 今まさに外貨建て保険を提案されている
- 外貨建て保険にすでに加入している
- これから資産運用の一環で外貨建て保険を検討する可能性がある
上記のいずれかに該当される方向けに、「超円安」の今だからこそ理解しておくべき外貨建て保険の活用法を解説します。
目次
外貨建て保険をやってはいけない人、検討してもいい人
はじめに結論から言ってしまうと、以下のどれかに当てはまる人は手を出さないか、もし既に契約されているのであれば、早期解約を検討されたほうがいいです。
- そもそも、別に保険でなくてもよい
- 為替リスクを許容できない
- 外貨建て保険の商品性が理解できない
- 契約内容、経緯等について記憶があいまい
上記の4パターンのどれかに当てはまる方は、外貨建て保険でトラブルになる可能性があるため、できるだけ避けたほうが賢明です。
逆に、外貨建て保険を検討してもいい・続けてもいいのは、以下のすべてに当てはまる人です。
- 『相続対策』『資産防衛』など保険化すべき明確な目的がある
- 円以外の通貨に資産を分散したい
- 商品の仕組み、為替リスクについて理解できる
- 支払った保険料に対して円建て保険を上回る保険金、解約返戻金を得たい
この結論をまず踏まえたうえで、外貨建て保険の各特徴を解説していきます。
そもそも外貨建て保険とは?
外貨で運用される生命保険
外貨建て保険とは、米ドルなどの外貨で保険料の支払や保険金・解約返戻金・年金などの受け取りを行なう保険です。
支払・受取時に「円→外貨」、または「外貨→円」に通貨を交換する必要があれば、必ず為替が影響します。(商品によっては外貨払い・外貨受け取りも可能。この場合は為替関係なし)
外貨建て保険には大別して
◆終身保険タイプ
◆養老保険タイプ
◆個人年金保険タイプ
といった3パターンがあり、それぞれ「一時払い」「平準払い」の2通りの払い方があります。為替・金利・運用実績などによって支払う保険料・受け取る保険金も変わる商品が多いのが特徴です。
保有資産の全てを円で持っていると、2021年7月~2022年6月の1年間で1ドル110円→135円となったように、急激に円安に振れて円の価値が下がったときなど、資産価値が相対的に大きく下がることがあります。
そこで資産価値を目減りさせないためにも、外貨建て保険などを活用して資産の一部を外貨にしておけばリスクが分散できます。
外貨建て保険が人気なワケは「日本の金利が低すぎる」から
外貨建ての保険が人気なワケは、日本の低金利政策が大きく関係しています。
まず円建て保険と比較すると、外貨建て保険は圧倒的に「予定利率」が高いのです。
※予定利率とは契約者が支払った保険料の「予定運用利率」のことで、この率が高いほど同じ保険料で買える保障額が大きく・満期金や解約返戻金(率)が高くなり、契約者に有利になります。
一例ですが、当社で扱っているM生命の米ドル建て終身保険(一時払いタイプ)の予定利率は、3.73%です(2022/9/7現在)。
国内では、予定利率が1.00%を超える円建ての保険商品は私の知る限りゼロですし、0.5%未満というものも多いです。予定利率だけで比較すれば、圧倒的に米ドル建ての商品の方が契約者有利といえます。
また保険会社は預かった保険料を様々な方法で運用していますが、代表的な運用方法である10年国債利回りを比較すると、米国3.345%に対して日本0.245%、(2022/9/7現在)で、米国債が約15倍も高い利率なのです。
このような金利差があることから、相対的に外貨建て保険の保険料(掛金)は割安になり、また保険金、満期金、解約返戻金等にも大きなプラスの影響を与えます。
ですから為替の影響を考慮せず、純粋に同種・同条件の商品パフォーマンスだけで比較すると、現状あらゆる保険会社で「外貨建て保険>円建て保険」となっているはずです。
今後も「外貨建て保険」のほうが有利?
アメリカFRBは、異常に高騰しているインフレ抑制のため、金融引き締めを公表しています。すでに2022年中に数回の利上げを実行しており、さらに2023年に向かって利上げの加速を図るものという見方もあります。
その一方、日本では依然として金融緩和政策を継続する見通しであり、今後は日米の金融政策の違いによってより一層の金利差が生まれるでしょう。
ということは、日米の金融政策の違いからドル高円安・金利差の拡大は、是正されるどころか現状維持または更に進行していく可能性があります。
中長期的にみても、日本の金融政策が「異次元の金融緩和」によって過去最低水準の金利を維持し続けている限り、現状の傾向は変わらないでしょう。
そのため、日本円で運用しても高いリターンを見込むことは到底できません。金利の高い米ドルに資金が流入し続けることは十分考えられますから、いまの円安ドル高の傾向は簡単に風向きが変わるとも思えません。
以上のことから、外貨建て(特に米ドル建て)商品の優位性は暫くの間は揺るぎないと言えると思います。
とはいえ、外貨建て保険は基本的に難しい商品です。その特性を十分理解して活用を検討する必要があります。次に、外貨建て保険のメリット・デメリットを改めて解説していきます。
外貨建て保険 3つのメリット
外貨建て保険を利用するメリットは大きく3つ
- 「金利が相対的に高く運用性に優れる」
- 「予定利率が高く保険料は割安」
- 「通貨分散ができる」
という点が挙げられます。
金利が相対的に高く運用性に優れる
米ドルなどの外貨建て保険は金利が高い分、運用性に優れています。外貨建て年金保険や外貨建て終身保険などの「運用部分」は、円貨での運用よりも優れています。
同じような条件の米ドル建て終身保険と、円建て終身保険を比較してみましょう。
【米ドル建て終身保険】
50歳男性
死亡保険金額:4万ドル($1=135円で540万円)
保険料払込期間:65歳まで
月額保険料:$151.72($1=135円で20,482円)
累計保険料:$27,309.60($1=135円で約370万円)
解約返戻率:66歳時107.9%、70歳時113.5%、75歳時120.5%
【円建て終身保険】
50歳男性
死亡保険金額:500万円
保険料払込期間:65歳まで
月額保険料:26,720円
累計保険料:4,809,600円
解約返戻率:66歳時92.2%、70歳時94.1%、75歳時96.3%
このように比較してみると、一目瞭然ですね。ドル建て終身保険なら、約370万円払って約540万円の保障が得られるのに対して、円建て終身保険は約480万円払って500万円の保障しか得られません。
このように国内外の金利差が影響することによって、いま販売されている外貨建て保険は、「為替リスク」を一切考えなければ、円建ての保険より優秀な商品となっています。
予定利率が高く保険料は割安
米ドルなどの外貨は日本円よりも高金利な分、保険会社が契約者に約束している予定利率が2%以上の商品が主流で4%近いものもあるなど、全体的に高いです。
予定利率が高いということは、保障(死亡保障など)の対価である保険料も割引されて安く買えます。
一方、円建ての生命保険の予定利率は、金融政策の影響もあってここ10年ほど1%未満の低い水準に留まっています。
そのため、「異次元の金融緩和」で超低金利が続く今のタイミングで円建ての生命保険に加入すると、非常に割高な保険となってしまうのです。
通貨分散ができる
外貨で金融資産を持つということは、当然ながら為替が影響します。
中長期的に外貨を保有する場合、購入時には円高・売却時には円安になっていれば利益が生じます(逆の場合は損失です)。
その一方でこれから考えなければいけないのは、「円だけで資産を保有するリスク」です。基本的に通貨の価値は、その国の経済力と強い相関関係にあると考えられます。
過去30年間ほぼ成長していない日本ですが、将来に渡っても日本の経済力がパッとせず他の国と比較して相対的に落ち込んだ場合どうなるでしょうか。いまより更に円安が進むことは十分考えられます。
そのとき、資源を持たない日本に住む我々は、何も手を打っていなければ輸入品などの物価上昇・円建て資産の価値下落といった二重の大きな不安に直面することになりかねません。
こうしたリスクヘッジのために、自分の資産の一定割合を外貨で保有するというのは決して悪いことではありません。むしろ、日本円に偏った資産のポートフォリオを分散することが出来るのです。
「資産運用」というと「不労所得で儲ける」イメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、「通貨分散による資産防衛」の観点は非常に重要です。
外貨建て保険の5つのデメリット
もちろん、いいことばかりではありません。
外貨建ての保険にはデメリット(問題点)も複数あります。
為替手数料が高い
外貨建て保険は、契約者が日本円で払った保険料を一旦外貨に交換する必要があります。
外貨への交換にかかる手数料を「為替手数料」といいますが、外貨建て保険の場合は結構高いコストが掛かります。
例えば、本日2022/6/29時点で某ネットバンクのFXの取引コスト(米ドル/円)は2銭、外貨預金の場合は25銭です。
これに対して外貨建て保険の場合、保険料を支払うごとにも受け取るときにも、円と外貨を両替するための為替手数料が1ドルあたり50銭~1円が発生してしまいます。
初期手数料が高い
「保障付き」という商品の構造上、保険は全体的に初期手数料が高い金融商品です。外貨建ての保険の場合、販売した段階で販売会社(銀行の窓口など)に対して4~10%の手数料が発生していると言われています。
例えば1000万円の一時払いの外貨建て保険なら、加入した時点で40万~100万円もの手数料が発生しているということです。
こうした高い手数料は金融庁も問題視しており、銀行の猛抗議に合いながらも手数料開示が一定の範囲で実現しました。ただし、手数料の引き下げといった動きには至っていないようです。
もっとも手数料が高くても、そのぶん確実なリターンがあればいいのですが、コストが掛かっている分だけ外貨建て保険は他の金融商品で運用するよりも「ローリスク・ローリターン」で低くなっています。
短期解約すると損をする
保険は初期の契約コストが高いため、短期解約に適していません。
これは前述のとおり保障関係費用が発生すること、初期コストが高いことが大きな理由です。
意図せず短期解約する可能性があるのであれば、そもそも外貨建て保険には加入しないほうがいいでしょう。
受取時に円高になると元本を大きく下回る可能性がある
いまは「超円安」ですが、為替変動によって将来、円高になる可能性は当然あります。
満期を迎えたときなどに円高になっていれば、円安時と比べて受取額がかなり減り元本割れする可能性も高くなります。
このような為替によるマイナス影響を避けるためには保有している外貨で払い・外貨受け取りとしておいて、円に変えるタイミングで調整するやり方が考えられますが、人を選びます。
受取時の為替リスクを気にされる人には不向きと言えます。
商品の仕組みが難解
外貨建て保険は、数ある保険の中でも仕組みが特に難解で、保険を熟知したプロでも理解に1~2時間かかるケースも少なくありません。
国民生活センターでも、以下のように注意喚起をしています。
寄せられた相談は似たような傾向があり、「契約者が高齢者」「契約内容が理解できていなかった」「説明が不十分」「不適切な説明を受けた」などです。
中には、保険であることすら理解できなかった例もあるようです。
外貨建て保険は、元本保証がある、利回りがよいなど聞こえが良いセールストークだけを聞いてちゃんと理解しないままに契約しがちだといいます。
しかし、ただでさえ難解な仕組みの商品を、前提知識のない方がわずかな時間の相談で商品特性を把握して、自分に合っているかを正確に判断するのは難しいでしょう。
仕組みを理解できない人はやってはいけないと思ったほうがよいです。
まとめ 少しでも理解できないものには入るべきではありません!
今回は「外貨建て保険(米ドル建て保険)はやってはいけない?「超円安」局面の活用法を解説」と題して、外貨建て保険の活用法について解説しました。
外貨建て終身保険は近年「銀行預金よりも利率がいい」「円建ての保険よりも安く大きな保障が取れてリターンもよい」と言われ、銀行を中心に非常によく売れています。
いずれも事実ですし、まさかウソを言って販売しているとも思えませんが、残念ながら仕組みの難解さなどが災いして、結果的にトラブルの元にもなっているようです。
外貨建て保険の中には確かに非常に良いと思える商品もありますが・・・、
個人的な感覚としては検討に値する商品は2割ぐらいかなと思っています。
残り8割は複雑怪奇なばかりで、手数料の高さ等を鑑みると殆ど加入する意味がないのでは・・というようなものだったりします。
当たり前のようですが、ご自身が少しでも理解できないものには入るべきではありません!
これ、結構できてない人多いです。昔からの知り合いだったので信用して加入したとか、営業マンのセールスに根負けしたとか様々なケースがありますが・・・
加入の仕方・やめ時などを間違えたりすると、場合によっては、数十万円~数百万円単位の損失が発生することもあるのです。
そして基本的に、「保有資産を増やしたい人」は外貨建て保険ではなく、外国株式型の投資信託など他の手法を選ぶべきだと思います。
何故かと言えば答えは単純で、「運用リターンがあまり良くない(実質年利回り1~2%程度にすぎない)」から。
運用面でも税制面でもNISA、iDeCo、小規模企業共済などのほうが有利ですし、選択肢も豊富です。
インデックス型の投信なら実質利回り5%以上も現実的ですし、10%以上の過去実績のものもあります。
あまり知られていないところでは、「元本保証型」と呼ばれる10年後~15年後に140%保証、20年後に160%保証といったものもあります。
「外貨建て保険」はあくまで「保険化する必然性がある人」が、「長期的に外貨で資産を持った方が有利と判断した(通貨分散したい)場合」に選ぶべきものだと考えます。
そして「保険は加入して短期解約すると多くの場合に損する」と書いておいてあえて真逆のことを言ってみますと、
もし「十分な検討をしないで加入してしまった外貨建て保険がある」という方にとっては、今は早期解約の絶好の機会かもしれませんね。
何しろ1ドル135円以上の水準は、20年ぶりのことですから。元本割れしていても、為替差益で相殺できる可能性があります。
ご加入中の保険についての分析や、これから検討する外貨建て保険について判断が難しい。
とはいえ馴染みの保険屋さんに相談するのもちょっと・・・と感じられるようであれば、私たち第三者の専門家にご相談するのもひとつの手です。
法人が専門ですが、個人の方のご相談もお受けします。最下部のバナー記載の無料相談予約よりお気軽にアクセスください。
ご意向を踏まえて、様々な可能性の中からベストな方法を選ぶお手伝いをいたします。
当記事がご参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
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