出張旅費規程の作り方サンプルとテンプレート 作成時の注意点や相場についても解説
公開日 2022年12月3日 更新日 2022年12月11日
一定以上の規模の会社では、出張をすると交通費や宿泊費のほか、出張手当が支給されます。
これらの交通費、宿泊費、出張手当のことを旅費と呼びます。その旅費は「出張旅費規定」で、適用範囲や金額を適切に定めることで損金算入が可能となり、節税効果が生まれます。
節税対策のために出張旅費規程を作っておきたくても、ゼロから作るのはなかなか大変ですよね。
この記事では会社の出張旅費規程を作成したい経営者向けに、出張旅費規程が会社の節税対策になる理由から、出張旅費規程の作り方まで解説します。
目次
出張旅費規程とは
出張旅費規程とは、会社の出張に関する旅費の取り扱いについて定めた規定です。
出張旅費規程について法律上の明確なルールがあるわけではありません。例えば「日当5,000円」や、「交通機関は電車、飛行機のみで車での移動は認めない」など、自社で妥当な金額を決めていきます。
出張旅費規定なし | 出張旅費規定あり | |
交通費 | 実費支給 | 規定で定めた金額を定額支給にできる
(実費支給も可能) |
宿泊費 | 実費支給 | 規定で定めた金額を定額支給にできる
(実費支給も可能) |
日当 | 給与扱い | 旅費交通費として経費扱いにできる |
出張旅費の金額は通常は「実際に支払った金額(実費)」支給ですが、出張旅費規程を作れば「規定で決めた金額を定額支給」にすることができます。
また、出張旅費規程を作ることで、通常は日当が「給与扱い」となるところを「経費扱い(旅費交通費扱い)」にすることができます。
出張旅費規程を作成するメリット
出張旅費規程を作成するメリットは以下の2点です。
【出張旅費規程を作成するメリット】
- 業務を効率的に行うことができる
- 税金対策になる
業務を効率的に行うことができる
出張にかかった宿泊費や交通費の領収証をすべて確認して実費精算をすると、申請する側も支払う側も大変な手間がかかります。
しかし出張旅費規程に、「日当5,000円」など、定額払いで支給することを定めておけば、業務の簡素化が図れます。
税金対策になる
出張旅費規程を作成し、日当として支払うことを記載しておくことで、経費として損金扱いになるため節税になります。
また、仮に出張にかかった実際の費用が8,000円だったとしても、出張手当として日当1万円としておけば、1万円を経費にできます。
出張旅費規程の作り方とサンプル
出張旅費規定の作り方を、次の5つのステップに分けて紹介します。
【出張旅費規程の作り方】
- 目的を定める
- 適用範囲を定める
- 出張の定義を定める
- 旅費の種類と支給額を定める
- 出張の手続きを定める
目的を定める
出張旅費規程は、まず何について定めたものなのか?出張旅費規程の目的を定め、就業規則に基づいたものであることを明確に記載する必要があります。
【サンプル】
第○条 この規程は、就業規則第○条に基づき、役員または社員が社命により、出張する場合の手続き、および旅費について定めたものである。 |
適用範囲を定める
出張旅費規程が適用される範囲を決めていきます。原則、出張旅費規程は全社員が対象ですが、役員などの支給額を別で規定することは可能です。また、非正規雇用社員やパート・アルバイトが出張する可能性があるときは、別途明記が必要です。
【サンプル】
第○条 この規程は、原則として役員および正社員に適用する。但し正社員以外の者であっても役員の承認を得ている場合は、本規定を準用することができる。 |
出張の定義を定める
どのような外出が出張にあたるのかを定義します。一般的には移動距離で、出張を定義することが多いようです。短距離の場合は、日帰り出張という分類を設けることもあります。
【サンプル】
第○条 本規定の出張の種類は宿泊出張と日帰り出張の2種類とする 宿泊出張とは勤務地より、片道距離が100km以上の地域へ出張し、宿泊を伴うものとする 日帰り出張とは(1)の地域内に出張し、拘束6時間以上となる宿泊を伴わない、出発当日に帰省できる出張とする |
旅費の種類と支給額を定める
旅費は交通費だけではないので、どのような費用にいくら支払うかをそれぞれ定めておく必要があります。
【旅費の項目】
- 交通費
- 宿泊費
- 日当
交通費
実費、定額どちらでも問題ありませんが、上限を決めて実費にしている会社が多いようです。
役職に応じてグリーン車などの使用について記載していることもあります。
【サンプル】
第○条 交通費は以下の各号のとおりとする。 ① 役員 グリーン車相当の運賃の実費 ② その他の社員 普通運賃の実費 |
宿泊費
宿泊費についても実費、定額どちらでも問題ありません。
交通費同様、上限を決めて実費にしている会社が多いようです。
【サンプル】
第○条 宿泊費は宿泊日数に応じて以下に定める定額を支給する ① 社長・役員 1日あたり1万6,000円 ② 部長・次長 1日あたり1万2,000円 ③ 一般 1日あたり8,000円 |
日当
日当については定額支給が一般的ですが、日当の金額は会社が自由に設定できます。
食事代なども規定しておけば日当の範囲に含めることも可能です。
【サンプル】
第○条 日当は出張日数に応じて以下に定める定額を支給する ① 社長・役員 6,000円 ② 部長・次長 4,000円 ③一般 2,500円 |
出張の手続きを定める
出張をする場合にはどのような手続きが必要なのか、出張時に発生する費用について、仮払いを受けるなどの手続き方法について決めておきます。
【サンプル】
第○条 出張使用とする者は、あらかじめ所定の「出張申請書」を会社に提出し、承認を得なければならない 第○条 出張するものは、あらかじめ概算経費を記入した「仮払金申請書兼受領書」を会社に提出し、承認を受けることで仮払いを受けることができる |
出張旅費規程のテンプレート
これまでの内容を含めた、出張旅費規程のテンプレートです。参考にされてください。
(目的) 第1条 この規程は、就業規則第○条に基づき、役員または社員が社命により、出張する場合の手続き、および旅費について定めたものである。 (適用範囲) 第2条 この規程は、原則として役員および正社員に適用する。但し正社員以外の者であっても役員の承認を得ている場合は、本規定を準用することができる。 (出張の定義) 第3条 本規定の出張の種類は宿泊出張と日帰り出張の2種類とする。 (1) 宿泊出張とは勤務地より、片道距離が100km以上の地域へ出張し、宿泊を伴うものとする。 (2) 日帰り出張とは(1)の地域内に出張し、拘束6時間以上となる宿泊を伴わない、出発当日に帰省できる出張とする。 (交通費) 第4条 交通費は以下の各号のとおりとする。 ① 役員 グリーン車相当の運賃の実費 ② その他の社員 普通運賃の実費 (宿泊費) 第5条 宿泊費は宿泊日数に応じて以下に定める定額を支給する。 ① 社長・役員 1日あたり1万6,000円 ② 部長・次長 1日あたり1万2,000円 ③ 一般 1日あたり8,000円 (日当) 第6条 日当は出張日数に応じて以下に定める定額を支給する。 ① 社長・役員 6,000円 ② 部長・次長 4,000円 ③ 一般 2,500円 (出張手続き) 第7条 出張使用とする者は、あらかじめ所定の「出張申請書」を会社に提出し、承認を得なければならない。 (旅費の仮払い) 第8条 出張するものは、あらかじめ概算経費を記入した「仮払金申請書兼受領書」を会社に提出し、承認を受けることで仮払いを受けることができる。 (出張中の出費) 第9条 業務上やむを得ない事情で追加の支出が生じた場合、領収証を提出し精算しなければならない。 (帰社報告) 第10条 出張した者が出張より帰社したときは、所定の「出張報告書」を直ちに作成し、所属長、もしくは社長に提出しなければならない。 (旅費の精算) 第10条 出張した者が出張より帰社したときは、所定の「出張旅費精算書」を作成し、所属長、もしくは社長に認証を受け、2週間以内に旅費の精算をしなければならない。 付則 この規定は、令和○年○月○日から実施する。 |
出張旅費規程を作成するときの注意点
出張旅費規程を作成するときの注意点もおさえておきましょう。
【出張旅費規程を作成するときの注意点】
- 必ず全社員が対象であること
- 法外な金額を設定することはできない
- 出張報告書は必ず作成しておく
必ず全社員が対象であること
出張旅費規程は全社員が対象であることが原則で、特定の役員・社員だけなど範囲を限定することはできません。ただし、役職に応じて、日当額に差をつけることはできます。
法外な金額を設定することはできない
日当が税金対策になるからと言って、実費からかけ離れた日当を設定することはできません。法外な金額設定をしていると、税務調査の対象になる可能性があります。日当や宿泊費の相場を国内、海外に分けてまとめてみました。
国内出張相場
|
日当相場 |
宿泊費の上限(/1泊) | |
日帰り |
宿泊 |
||
部長 |
2,666円 | 2,900円 | 9,835円 |
課長 | 2,479円 | 2,711円 |
9,345円 |
一般社員 | 2,094円 | 2,355円 |
8,605円 |
海外出張相場
日当 | 宿泊費の上限 | |||||||
北米 | 中国 | 東南
アジア |
欧州 | 北米 | 中国 | 東南
アジア |
欧州 | |
部長 | 5,593円 | 5,185円 | 5,226円 | 5,552円 | 1万6,385円 | 1万3,570円 | 1万3,588円 | 1万6,309円 |
課長 | 5,308円 | 4,888円 | 4,932円 | 5,273円 | 1万5,435円 | 1万2,822円 | 1万2,833円 | 1万5,359円 |
一般社員 | 4,913円 | 4,514円 | 4,543円 | 4,881円 | 1万4,621円 | 1万2,085円 | 1万2,092円 | 1万4,556円 |
参照元:産労総合研究所
出張報告書は必ず作成しておく
税務調査があったときの証拠書類として、出張報告書を作成のうえ、当日の業務や訪問地などを記入しておきましょう。
なぜかと言えば、日当の支払いについては、領収書やレシートで証明するのではなく、日当を支払った根拠となる情報(出張の活動)が必要になるためです。
税務調査で否認されるおそれに繋がりますので、必ず作成を義務付けましょう。
会社の税金対策としては、「法人保険」という選択肢もある
出張旅費規定の作成は税金対策として有効ですが、法人の節税という観点からは、ほかにも以下のような方法があります。
- 社員の健康診断
- 経営者の自家用車を社用車にする
- 30万円未満の消耗品を購入する
- 不要な在庫処分
- 法人保険に加入する
【過去参考記事はこちら↓】
中でも法人保険の加入は、経営者や役員の万が一に備えられるだけではなく、支払った保険料の一部、あるいは全部が損金扱いにできます。
【過去参考記事はこちら↓】
法人保険について興味がある経営者の方は、トータス・ウィンズまでお気軽にご相談ください。
まとめ
出張旅費規程の作成は税金対策になります。しかし出張旅費規程は、各社の経営における合理性を考慮した適切な金額が設定されていなければ、損金算入が認められません。
出張旅費規程を作っていない会社の経営者の方は、今回の記事でご紹介した作成したサンプル・テンプレートを参考に、出張旅費規程を作成してみてはいかがでしょうか。
当記事がご参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
そして金融・保険に携わるプロとして、何よりお客様に対する誠実さ・真心・信頼関係より大切なものはないと考えています。
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