法人向け税対策|経営者が知っておきたい15の裏ワザを徹底解説
公開日 2022年11月19日 更新日 2023年3月15日
法人で事業を行っている場合、得られた利益に応じて法人税を納付しなければなりません。
それは当然のルールではあるものの、釈然としないこともあるでしょう。
経営者にとって、やっとの思いで確保できた利益が納税で消えていくのは、社会の義務と理解しつつ避けたいことでもある筈です。
そこで会社のために合法的に資金を残せる税対策は、どれだけ知っておいても損はありません。
今回は、税効果が期待できる15の具体的な方法についてご紹介します。
法人が税対策を講じる必要性
会社が納税額を抑えるためには、課税所得金額を意図的に下げる、いわゆる節税対策が欠かせません。その大前提として、「節税」と「脱税」は根本的に異なることを理解しておかなければなりません。
節税とは、合法的に納税金額を減少させ、少しでも多く会社のためにお金を残せるよう工夫することです。それに対して脱税とは違法に納税を免れることであり、発覚すれば刑事罰の対象になります。そのため、虚偽の申告などは絶対に行ってはいけません。
脱税は絶対にダメですし、節税も一時的な課税繰り延べにすぎないものや、法制度の抜け穴を付くようなものは要注意です。この記事では基本的に、「国の政策や税率構造を利用することで課税額が減る」施策をご紹介します。
法人に課せられる税金の中には、条件を満たすことで減額されるものがあります。また、国や自治体が用意している控除制度を活用するためには申請が必要ですのでご注意ください。活用できる制度や条件を把握しておくことも大切です。
法人向け税対策 15の裏ワザ
法人ができる税対策として代表的なのは、以下の方法です。
【法人向け税対策の裏ワザ一覧】
- 役員報酬を適切に設定する
- 売却損・除却損・評価損を計上する
- 未払金や未払費用の今期計上する
- 減価償却資産を一括処理する
- 役員や社員の家を社宅にする
- 自家用車を社用車にする
- 社用車として中古車を買う
- 決算期をずらす
- 出張手当の支給
- 福利厚生を充実させる
- 設備への投資
- 社員への投資
- 子会社の設立
- 中小企業向けの共済への加入
- 法人向け保険への加入
これらの方法がどのように効果を生み出すのか、詳しく見ていきましょう。
1.役員報酬を適切に設定する
役員報酬は損金算入できるため、役員報酬を増やせば課税所得金額を減少させることが可能です。
とはいえ、役員報酬が高額すぎると今度は役員個人の所得税も高くなってしまいます。役員報酬の金額は、会社の業績などから適切なバランスにすることが大切です。
また、役員報酬の額はいつでも変更できるわけではありません。金額を変更できるタイミングは事業年度開始日から3ヵ月以内と決まっており、それまでに適切な額を設定する必要がある点にご注意ください。
さらに、非常勤の役員を設置している場合は、事前確定届出給与の制度を利用しましょう。
この制度を利用すれば定期的な支給を行わなくても、申告した報酬額であれば経費として計上できます。従って、毎月支払う役員報酬と同様の節税効果が期待できるのです。
2.売却損・除却損・評価損を計上する
不要な固定資産を売却するなどして処分したり、在庫を整理したりすることで、固定資産の帳簿価額と処分価額との差を売却損・除却損・評価損などの損金として計上することが可能です。
損金計上できる金額が大きくなれば、課税所得金額が減らせますので、その分法人税額を減らせます。
- 売却損:固定資産を売却した際、売却時の帳簿価格に対し売却価格が下回る場合は、その差額を固定資産売却損として計上します。
- 除却損:不要な固定資産を売却ではなく処分(廃棄など)した際に、発生する損失をいいます。固定資産を処分した際の固定資産の帳簿価格が売却損の額です。
- 評価損:在庫整理の際に、型崩れなど品質が劣化しており、仕入れの時点よりも商品の価値が下がる場合、その差額を評価損といいます。評価損は損失として計上できます。
固定資産の除却を行うにあたり、廃棄が間に合わない場合は「有姿除却(ゆうしじょきゃく) 姿が有る(廃棄していない)のに除却損を計上できること」という会計処理で損金算入できることもあります。
また、評価損の計上は、以下いずれかのケースに当てはまる場合に認められるため、いつでも計上できるわけではありません。
- その商品が災害によって損傷を受けた場合
- 破損など商品の品質劣化が認められる場合
- 流行性が極めて強い商品の場合
いずれも税務調査で否認されないよう、適切な証明書類の準備など客観的な証拠、損金計上の根拠を用意しましょう。
3.未払金や未払費用を計上する
決算前に未払金や未払費用を経費として計上することで、課税所得金額を減らすことが可能です。
未払費用とは、今期に役務の提供がなされたものの代金の支払いが終っていない費用のこと。例えば、社会保険料や従業員給与、固定資産税などが該当します。役員賞与は対象外です。
ただし未払費用として計上するためには、「決算日までに支払うべき具体的な金額が明らかになっていて、支払い義務が発生している」ことが必要です。
4.減価償却資産を一括処理する
業務で使用している資産のうち、時間の経過によって劣化するものを「減価償却資産」と言います。例えば、建物などの不動産や機械装置、車両、ソフトウェアなどです。
減価償却とは、その資産の取得費用を法定耐用年数に応じた償却率を用いて、事業年度ごとに分割しながら費用計上する会計処理方法のことです。
例えば、青色申告を行っている中小企業の場合、取得価格が30万円未満の少額減価償却資産であれば年間300万円を上限に、全額その年度に減価償却ができます。一括で費用計上できるため、課税所得金額を減らすことが可能です。
ただし、この少額減価償却資産の一括計上は、青色申告を行っている中小企業および個人事業主を対象とした、令和6年(2024年)3月31日までの特例です。利用にあたっては、確定申告の際に「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書」の提出が必要です。
5.役員や社員の家を社宅にする
役員や社員の家を社宅扱いにすることで、家賃分の経費計上が可能です。福利厚生の一環として会社が家賃を負担するため、事業用必要な費用だと認められるからです。
役員の社宅家賃の一部を会社が負担し、社員の社宅については会社から住宅手当を支給することで経費計上ができ、法人としての利益を減らせるため、課税所得金額の減少につながります。
ただし、役員や社員の家賃負担があまりに低いと現物給与とみなされ、課税対象となる可能性がある点に注意が必要です。こうした事態を避けるためにも、費用に計上するのは家賃の50%程度までに留めておきましょう。
<参考記事>
6.自家用車を社用車にする
自家用車を社用車にすることで、ガソリン代や自動車保険料、有料道路利用料、駐車場代などを費用として計上できます。
新しく購入する車を法人用の車両にすれば、購入代金も経費計上が可能。購入代金には、自動車税なども含まれます。ただし、法人名義で登録することによって、車検期間が短くなる他、車検費用や自動車保険料が高くなるのがデメリットです。
リース契約の場合は、事業年度末にその事業年度分のリース料を一括前払いにすることで費用計上できます。社有車にすることで得られるメリットと、法人名義で登録することによるデメリットを比較して判断してください。
<参考記事>
7.社用車として中古車を買う
社有車として車の購入を検討している場合は、新車ではなく中古車を選ぶことをおすすめします。
なぜなら、新車と中古車では法定耐用年数が異なるからです。新車の法定耐用年数は6年ですので、6年にわたって分割して減価償却する必要があり、毎年計上できる費用の額が少なくなります。
一方、中古車の法定耐用年数は4年ですが、法定耐用年数を超えている車は2年で償却できるため、4年落ちの中古車を購入すると1年で車の購入経費全額を経費計上できるのです。
8.決算期をずらす
決算期直前に予期せぬ大きな売上が計上される場合に有効なのが、決算月をずらすことです。
急に売上が増えた場合、節税対策を講じる時間が確保できないと課税所得金額が増え、納税額も大幅に増えてしまいます。そこで、決算月を前にずらすことで、売上で得られる利益を翌決算期に回すことができるのです。
決算期をずらすためには、株主総会の特別決議により定款を変更しなければなりません。その上で、管轄の税務署に対し、決算期変更の届出を行います。定款変更の際には議事録を作成する必要もありますので、忘れず対処してください。
9.出張手当を支給する
業務上の出張が多い場合は、出張手当を支給して経費計上ができます。また、出張手当の場合、旅費規程を作成することで、実際に出張にかかった費用以上の金額を計上できます。
例えば、出張手当として1万円を支給すると旅費規程に記載することで、実際にかかった費用が8,000円だったとしても1万円を費用計上できるという訳です。
ただし、旅費規程にはある程度の相場がありますので、常識の範囲内の金額設定に留めなければなりません。また、出張の事実が分かるような出張報告書などの準備も必要です。
10.福利厚生を充実させる
社員旅行や健康診断、社内レクリエーション費用や芸術鑑賞費用などは、福利厚生費として費用計上することが可能です。うまく福利厚生制度を充実させることができれば、社員の労働意欲を高めつつ課税所得金額の減少につなげられます。
ただし、福利厚生費として認められるためには、事業ごとに定められた要件を満たさなければなりません。例えば、健康診断の場合は、以下のような要件を満たす必要があります。
- 全社員を対象にしている
- 検診を受けた社員全員分の費用を会社が負担する
- 常識の範囲内の費用である(著しく高額でない) など
社員旅行や研修旅行なども、業務上必要だと認められる要件を満たせば、原則として福利厚生費として経費計上ができます。
11.設備への投資
設備への投資で課税を抑えられる制度として「中小企業経営強化税制」があります。
これは、特定の設備を導入した際に、「税額控除」もしくは「即時償却」の支援が受けられる制度のことです。設備投資減税とも言われています。利用の際には、次の「税額控除」か「即時償却」のどちらかを選択する必要があります。
- 「税額控除」:設備費用の税額を最大10%控除できる
- 「即時償却」:導入した設備費用を全額その年度の費用に計上できる
この制度は2023年3月31日までとなっていますが、これまでも延長が繰り返されていますので、利用の際は期限にも留意しておきましょう。
設備投資には多額の費用が必要ですので、会社にとって本当に必要かどうか検討することが大切です。節税を意識するあまり不要な設備を導入しても、手元の資金が減る結果となり会社としては本末転倒であることを理解しておいてください。
12.社員への投資
資格取得費用など、社員のスキルアップにつながる費用を会社が負担することで費用計上ができ、納付税額を抑える効果を期待できます。
業務の遂行に必要な資格について会社がバックアップすることで、社員のモチベーションも上がりますし、業務の円滑化にもつながるでしょう。このような社員への投資は、節税対策以上に大切なことです。
ただし、費用計上が認められるのは業務上で必要不可欠な資格取得のための費用などです。運転免許取得費用など一般的な資格については適用外ですので、ご注意ください。
13.子会社の設立
子会社を設立することで資産を分散でき、結果として納税額を抑えることが可能です。
最低資本制度は設けられていないため、新しい会社の設立は難しいことではありません。また、資本金が1億円以下であれば、課税所得金額が800万円以下の部分について税制の優遇を受けられます。
ただし、節税効果があるからといって子会社を設立すれば得になるわけではありません。会社設立後の中長期的な経営も十分考慮した上で実行に移す必要があります。
14.中小企業向け共済への加入
「中小企業退職金共済」、「小規模企業共済」、「経営セーフティ共済」などに加入することで、節税効果を得られます。これら共済への掛金は全額損金計上が可能だからです。
- 中小企業退職金共済は、自社で退職金制度を設けることが難しい中小企業や小規模企業の経営者が、退職金共済契約を結ぶことで退職者に退職金が支払われる仕組みです。新規加入や掛金増額の際には、掛金の一部について国の補助を受けられます。
- 小規模企業共済も同様に、小規模企業の経営者や個人事業主向けの退職金制度です。
- 経営セーフティ共済とは、取引先の倒産により売掛金の回収ができなくなった場合に、必要な事業資金を借入れられる共済制度。担保や保証人は不要で、掛金の最高10倍まで借入れできます。
いずれも国が認めた制度で合法的な節税が可能ですが、共済を自己都合で解約する場合の解約返戻金は課税対象となりますので、ご注意ください。
15.法人向け保険への加入
法人向け保険に加入した場合、その種類によっては保険料の全額もしくは一部を経費計上できます。
また、保険は消耗するものではないため、解約した際には解約返戻金が受け取れますし、保険に加入しておくことで会社のリスクに備えることが可能。緊急時や予備資金として貯めておくこともできます。
ただし、経費計上額を多くするために高い損金を設定するとキャッシュフローが悪くなりかねません。また、解約のタイミングによっては損をすることもあるため注意が必要です。
法人保険の最適な活用方法を知りたい方は、ぜひ当社トータス・ウィンズにご相談ください。
法人の税対策を行うときの注意点
法人の税対策を行う際には、以下の点に注意が必要です。
- スケジュール管理が大切
- 無理に支出を増やさない
税金を納めたくないからと言って税対策をやりすぎると、キャッシュフローが悪化して、会社の経営悪化につながる可能性もあります。導入前に注意点をおさえておきましょう。
スケジュール管理が大切
適切な税対策を行うためには、スケジュール管理が非常に大切です。
一般的に税対策を検討すべき時期は、納税よりずっと前のタイミングになります。少なくとも情報収集は出来る限り早いうちから準備しておくと、余裕を持った対応ができるでしょう。
営業年度のうち、どの時期にいくらくらいの納税が必要なのか把握しておけば、検討すべき税金の種類や対策・手段が考えやすくなります。
具体的な税対策を導入するには、遅くとも決算期3ヵ月前には大まかな利益予想を立て、具体的なスケジュール管理が必要になってくることを認識しておきましょう。
無理に支出を増やさない
法人の税対策として経費計上が挙げられますが、だからといって無理に経費を使って、支出を増やすことは賢明とは言えません。
会社として発展していくために必要な費用だけを使い、計上することが大切です。会社の発展に関係のない支出は、キャッシュフローの悪化につながりかねません。
節税自体は合法とはいえ、不透明な会計処理を行ったり、ペーパーカンパニーを乱用したりすることは違法とみなされる可能性すらあります。税対策の立案・実行には、必ず税理士などの専門家に相談しましょう。
まとめ
中小企業が行える税対策には様々な方法がありますが、自社の本業や将来への投資などの観点からも自社にとってメリットがあるかどうか検討して利用する必要があります。
法人税の仕組みを理解し、複数ある施策の中で優先順位を付けることが大切です。
国や自治体が用意している控除制度などもうまく活用しながら、自社に合った対策を行っていくことをおすすめします。
専門家に相談してアドバイスや具体的な提案を受けたあとに、もし不安な点があれば、その内容が妥当であるかを第三者に検証してもらう(セカンドオピニオン)ことも方法の一つです
弊社トータス・ウィンズでは 、法人保険の20年以上の相談実績があり、お客様目線に立った法人保険分析や見直しをご提案します。
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当記事がご参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
【経歴】
1979年生まれ 京都市出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY 株式会社)入社。一貫して金融機関向けITシステム開発業務に携わる。
金融システム開発の現場で、2007年~2009年頃のリーマンショックによる経済の大混乱、強烈な景気後退、資産の激減などを目の当たりにする。
その経験から、「これからの日本人の合理的な資産形成・防衛に、正しい金融リテラシーが絶対に必要」という強い思いを持ち、2011年4月 株式会社トータス・ウィンズに入社。
中小企業に特化したリスクマネジメント対策のコンサルタントとして、500社以上の中小企業、1,000人以上の保険相談業務に携わる。2015年、代表取締役就任。
法人保険活用WEBサイト『点滴石を穿つ』を運営する一方で、法人向け保険代理店として、東京都中央区を中心にコンサルティング活動を行なう。
【趣味】
美術館巡り、千葉ロッテマリーンズの応援
【自己紹介】
中小企業向けの金融商品が数多ある中で、わたしは一貫して『100%顧客優位な商品選び』をポリシーに中小企業経営者向けの保険活用プランニングを行なってきました。
これまでのキャリアでの最大の学びは、『お金やお金の流れに関する知識や判断力=「金融リテラシー」は、私たちが社会の中で経済的に自立し、生き抜くために必要不可欠』ということです。
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